大司教のいとも絢爛なる幸運 | 食べて、呪って、変をして、
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大司教のいとも絢爛なる幸運

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「あ……や」
 室内とはいえ冬の冷気に晒された白い胸が震える。小ぶりなそれはまだ芯を備えた硬さを持っており、支えがなくとも流れることなくつんと立ち上がった。先の快感によって胸の先端はふんわりと芽吹いて桃色に染まっている。
 それは初々しい清廉な果実だった。未だ穢れることもなく、行為に慣れて熟れてもいない。
 恥じらいに胸を覆い隠そうとするタベルナの腕を押さえつけ、大司教はしげしげと女の乳房を睥睨する。そして出した感想は「ちいさ」だった。
「想像と記憶ではもっと……こう……ね!」
 大司教は自分の胸の前で手を椀型にしてあからさまに不満そうな表情をする。
「あ? これもしかしなくても余の方がデカいんじゃないか? 男より小さいとか、お前恥ずかしくないの。まるでまな板じゃないか」
「ひどい……」
 無理に暴いておいてそれは無いだろう。なんて身勝手で失礼な男。タベルナは情けなくて泣きそうになった。
「やはり人間見た目の好みというものも重要だろう。女はその限りではない奴もいるようだが。とにかく余は巨乳が好きなんだ。でもまあ案ずるな、男に揉まれればちゃんと年相応以上にデカくなるからな。余はそういうの結構得意だから」
 言うなり大司教が手の甲でタベルナの胸をさっとひと撫でにする。
「ひ、ああぁっ!?」
 それだけでこうした事に不慣れなタベルナの胸には覿面だった。その上今は無駄に昂ぶらされて肉体に与えられる刺激をすべて性的なものだと捉えてしまう状態なのだ。
「そんなにいいのか。益々自信がついてしまうな。どれ」
 今度は凝り固まった薄桃の先端をぴぃんと弾かれる。
「んあっ」
 瞬間、タベルナの身体がびくびくと跳ね、まるで陸に打ち上げられた瀕死の魚のようになる。胸の刺激が腰に直撃するせいだ。
「ふうむ、その反応、あまり触った事がないのか?」
 その問いにタベルナが真っ赤な顔でこくんと頷く。
 胸なんて身体を洗う時にさっと泡で撫でつけるくらいのもので、大司教がするようにいやらしい目的でねっとりと揉みしだく事なんてない。誰にだって普通はない……はずだ。
「せっかく付いてるのにもったいない。自分にそんなものが二つもくっついてたら、余なら一日中弄くり回して自慰に耽るぞ」
 だが大司教はそうでもないらしい。
 ただ自分はそんなの御免だった。一日中あんなふうにされるなんて耐えられそうにない。だからタベルナは大司教を見上げて哀願する。
「あんまりひどくしないで……」
 そんな風なしおらしい態度は大司教をもっとやる気にさせるのだが、タベルナはそれを知らない。知っていたらいつもこんな酷い目には遭わない。
「よしよしわかった、お前たまに女の子みたいでかわいいな。女の愉しみというものを余が教えてやろう」大司教は安心させるようにタベルナの頬を撫で、耳元で囁く。「じっくりとな」
 大司教の声がうぶな娘を煽る。それだけにとどまらず、その指がそろりそろりとタベルナの乳輪をなぞってくる。乳首を直に触られるよりは刺激に欠くが、核心に迫らぬその快感はじれったく甘い。そうされると乳首に触れて欲しくなってしまうから困る。
 タベルナの息が上がり、白い肌が性的な興奮によって桃色に染まってゆく。
「は、ぁん……猊下、げいか……」
 大司教の下でタベルナは身体を淫らによじる。吐息は熱っぽく、そしてこんな風に淫靡に、熟した動きをする事なんて滅多にない。いいや、普通に暮らしていれば絶対にありえない。一応男として生きているのだから。
 だからこそそんな自分の変わりようにもまた昂らされてしまうのだ。
「おねが、おねがい、します……あんまり触らない、で。胸が大きくなったら、女だって、ばれちゃう……から」
「女か。お前女なんだな?」
「ん、ん……わかりません、わたし……」
「では今は女でいろ」
 大きな手が両の乳房をすくい上げて揉みながら、親指で先端をこりこりと弾く。
 その刺激は身体の中心を電撃のように駆け抜けて下腹部に溜まり、肉棒を持ち上げる。
「あっ、いやぁ、あう、あ、でちゃう、うぁ」
「これ以上パンツ汚したくないなら我慢しろ。できなきゃまた早漏と詰るぞ」
 とは言いつつも大司教はまったく我慢させる気などないようで、タベルナの滑らかな首筋に顔を埋めてくる。
 その唇は徐々に下へと降りて来て、タベルナを追い上げる。
「やめて、やめて猊下……」
 その唇はおそらくタベルナが今一番感じる場所を目指しているのだろう。タベルナは両の手で大司教の頭を抱え込むが、無駄だった。
「自分の言葉を恨むんだな」
 大司教の吐息がタベルナの鎖骨の辺りで弾け、そして……。
「あふっ、あ、いやああ!」
 丸みに沿って降りてきた唇が胸の先端を啄む。
 タベルナの薄い身体が飛び出しナイフのように激しく反り返る。それは大司教を反動で跳ね除けそうなほどの力強さだった。
 だというのに大司教はめげずに両の果実を責めぬいてくる。敏感な中心が生ぬるい軟体によって押しつぶされ、ついでに程よく甘噛みされる。舌で押し込まれると胸の奥がきゅうんと切なく震え、歯で啄まれると感覚が吹っ飛んでしまいそうな程に痺れる。その刺激たるや飴と鞭ならぬ、飴ともっと甘ったるい飴だ。味わわれているのは自分だというのに、快感を味わわされているのはこちらなのだ。
「――ひっ、あ゛」
 タベルナは射精感を抑えるので精一杯で、みっともない喘ぎ声を抑える事が出来ない。
「あんまりな暴れ馬だ。もう少し色っぽく喘げないのか」
 そう言われても跳ね上がる腰を床に沈める事も、大司教好みに喘ぐ事も不可能だった。まず腰どころではなく頭の奥の司令塔からして甘い電波に妨害されておかしくなっているのだから。
 つまり「イきそうなのか? それともイカれてしまいそうか?」というわけだ。
「いっ、ちゃう……っ!」
 大司教のふざけた問いかけに答えたわけでもないのだが、タベルナは素直に反応を返す。股間はじりじりと張り詰め、もう限界だった。相手の一挙手一投足どころか、自分の妙にか細い感じた声にまで変な気を起こしてしまう。自分がこんな声を上げるようになってしまうなんて。
「じゃあいけよ。いつものように早漏と謗ってやるから」
 大司教は胸元で意地悪く言いながら、そのささやかな膨らみを荒らし回る。大きな手で包み、持ち上げ、芯を蕩かすようにふわふわと揉みながら先端を摘む。
 新たな快感を植え付けられる度に声が揺れる。
「あ、だ、やだ、やです……ぅ」
「じゃあ言わないから」
「ちがいます、そうじゃなくって……」
「言われたいのか」
 そうではなく、ここは厨房なのだ。タベルナの神聖な場所だった。
「や、ぁ……」
 だからそんな場所を穢さないようにタベルナは一心に堪える。いいだけ弄られて今更という感もないではないが、最後の一線というものがある。
「やどりぎの下だ。お前が嫌がろうとなんだろうとこうなる運命なんだよ。それも自分でそう決めたんだからな」
 真っ白な胸に落とされる唇の感触が追い上げるような激しいものから、徐々に柔らかく優しくなってくる。舌が勃ち上がった乳首を巻き込むように絡め、肉棒をそうするようにゆっくりと焦らすように扱かれる。
 まるで懐柔してくるようなそれに、タベルナは屈しそうになってしまう。
 大司教にはそんな事までお見通しなのだろうと思うと、敗北止む無しとなってしまいそうになるが、しかし絶対にここでそんな事にはなりたくない。タベルナは目を固く閉じ、その爆発寸前の場所にすべての意識を集中させた。出そうになる度にぴくんぴくんとそこが浅ましく震えるのがわかる。そして腰も、脚も。
「ところであの飾り、誰がつけたか知っているか」
 大司教の唇の端が裂けるように左右に広がり上に持ち上がる。まるで人間に化けた悪魔か魔物の類いのようなその顔で大司教は嗤った。
「余だ」
 その言葉が追い打ちだった。
「ひどい……」
 服の内で暴れ回る肉棒が一瞬動きを止める。それは嵐の前の静けさ、今際の際の人間が一瞬気力を取り戻すのと似ていた。そしてじんわりと先兵が滲む。一度先陣切ってしまったものをもう押しとどめる事は能わない。
 ばら色に染まった頬に諦観と快感と解放の涙が伝う。
「は……あう、んっ……!」
 タベルナはすべて諦めて吐精し、大司教に身を委ねた。

 

 どれくらい時間が経ったやら、もうわからなかった。一時間か、あるいは五分。
「ん……」
 大司教は飽きず胸を弄り回し、タベルナはされるがままにあった。
 大きな温かな手から伝播する熱がタベルナの身体を芯から温め、ぼうっとさせる。もう抵抗する気概も削がれ、ただ力なく喘ぐしかなかった。
「やけにしおらしいな。十八番の体術でもかけたらどうだ」
 そう言われてもいいだけ大司教に気骨を抜かれていたし、それにそんなに嫌ではないからそうする必要がない。
「黙っているなら最後までするぞ」
 それでも構わないとタベルナは思う。そうやって受け入れてみれば、もしかしたら大司教のものになったという安心感を持てるかもしれない。
「いいのか。後で処女だったのにどうたらこうたらとか言われても余は知らんからな。責任も取らん。結婚もできないぞ。しないぞ」
 こちらの決意は固まったというのに、この男、何を女々しく逃れようとするのか。
 しかしタベルナは苛々するというよりか、なんだか一層大司教が愛おしくなった。大上段に構えている割に妙に小心な所がある。
「あとは子供ができるのも困る。余のせいで傷ついたと言って、お前が料理長の任を投げ出して逐電するのも」
 あらぬ方を見てぶつぶつ言っているのも、一生懸命予防線を張るためなのだ。大司教もタベルナと同じように安心したいのかもしれない。相手が絶対に自分に心を捧げているという保証が欲しいのだ。
「猊下」
 だからタベルナは努めて穏やかな声で大司教をに呼びかけた。
「なんだ」
 それをうけてようやく独り言を止めた大司教だが、タベルナは別段何か言葉で伝えるということもなかった。ただ大司教の頬を手で優しく撫でるのみ。
身体も頭もまだどこか茫洋とした場所にあったが、そのお蔭か手の動きも微笑も、殊の外慈愛の籠ったものになった。

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