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敗北と価値

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「んう、うまいわけ、ないだろうが……っ」
 セジェルは腕で唇をぬぐいながら娘を睨みつける。
「でも全部飲んでるじゃない」
 娘はセジェルの足元に戻り、その身体に圧し掛かった。
 挑むような顔がセジェルの目の前に近づいて来る。セジェルは顔を背けるが、その耳元で娘が囁く。
「恥ずかしい顔ちゃんと見せて。わたしに入れられて掘られまくって情けなく喘ぐ顔」
 期待に震える肉壺の入口に十分に濡れた娘の怒張の先端が触れる。
 セジェルの喉が恐怖と期待にごくりと鳴り、反る胸板が娘の豊かな胸を下から押し潰す。
 娘の怒張のぬるついた先端がセジェルの肉穴を割り拡げ、ゆっくりと中を犯しにかかる。
「おぉ、おおお……」
 奥へ奥へと肉環を押し広げながら埋められる肉棒は硬く、大きく、逞しい。ともすれば己のものよりも雄々しい娘のそれに凌辱され、嫌悪感どころか期待を抱いてしまう度に自分は完全に娘に隷属してしまったのだと思い知らされる。
 娘の腰が止まり、セジェルの肉穴は淫らで暴虐な凶器で満たされた。
「もう完全にわたしのものになっちゃったね」
 かつては異物でしかなかったそれは、今となっては馴染み深い愉悦である。筋張った太腿は断末魔の小動物のように弱弱しく痙攣し、主人の腰を包み込み優しく迎える。
「んぅ、う……」
 情けない鳴き声を上げて敗北感に酔いしれているセジェルの腹に娘の手が這う。見事なまでに割れた肉壁は娘の手を押し返し、その頑健さを誇る。
 松明の温かな光に照らされる身体は恍惚の汗にしっとりと濡れている。昼の光の下でなら健康的に見えるのに、汗で照る様はどこか艶めいて淫らだ。漏れる吐息は快感に飲み込まれかけている証拠。
「すごおい。中からこの筋肉滅茶苦茶にしてあげるね!」
 言葉の通り、娘の肉棒は激しくセジェルの内側を突きはじめた。
「あひ、はひぃ、あ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ」
 下から責められ追い詰められてセジェルの息が荒くなり、女のような情けない善がり声をあげてしまう。赤銅色の喉が天を仰ぎ、そのゆるい丘陵を汗が滴る。
 肉環の一本一本を抉じ開けられ、肉襞の一枚一枚を広げられ、粘液をべっとりと塗り付けられていく。ねちねちという卑猥な音で、己の中が確かに穢されているのだと知る。
 相手が怪我人という事を忘れているのか、あるいはわざとやっているのか、娘は手加減なしに持ち前の偏執的な責めを発揮させてくる。娘の肉棒の先端の膨らみに善い場所を執拗に突きまわされ、セジェルは息も絶え絶え絶頂に追い上げられる。
 硬い娘の怒張がセジェルの肉穴を扱く刺激が腰に溜められていくにつれ、彼の睾丸が張りつめ、最近めっきり役に立っていない肉棒の先端はぬるついた液体を垂らす。
「んあ! うおおおっ!」
 セジェルは低くすすり泣きながら、どうにも耐えられない射精感に屈服した。
 緊張し仰け反った赤銅色の身体に白い敗北の証が飛ぶ。
「はあ、んは、あ……」
 娘を緊縛していたしなやかな身体が緩む。勿論彼の卑しい肉穴も。おかげでまだ遂情していない娘の怒張がずるりと抜けた。
「すごく締め付けてくるから奥まで入れられなかったよ。今なら入るかな」
 娘は腰を退き、セジェルに俯せるように促す。
 しかし快感をぶちまけたばかりの身体は感じやすく、これ以上の肛虐を受けたら理性というものが飛んでしまいそうだった。
「だが、まだ今は、まだ……」
 言葉だけは抵抗を示すが、しかし身体がいう事を聞かない。完全に娘の支配下に落ちた浅ましい肉体は寝台に伏せ、尻を掲げてしまう。
「だってわたしまだ終わってない」
 娘はセジェルの腰を掴み、再び挿入した。
「や、やめ……んほおお゛、おおお゛っ!!」
 背後からの一突きにセジェルは身悶えながら歓喜の声をあげた。
 痺れて役立たずな肉環の一つ一つをごつごつした肉竿で素早く奥へと擦り込まれる。狭まった奥の肉関門が野蛮な侵入者を阻みにかかるが、それだって陥落するのは時間の問題だった。
「んあ、ああ、もういやだ、それ以上奥は、やめろぉ……」
 闘いの最中のように臍の奥を力ませて侵入を防ごうとするが、セジェルが抵抗すればするほど、肉壺が締まり、娘の形と幽かな動きを嫌という程感じてしまう。娘の怒張に浮いた筋の一本一本に肉襞が涎を垂らしてむしゃぶりつき、肉関門は小刻みに門扉を叩いて懐柔して来る濡れた笠に媚びるように吸い付く。
 まるで粘膜だけで深く接吻しているかのようだ。そんな淫らな考えが一瞬頭をよぎり、羞恥のあまりにセジェルの力が緩む。
 ぶちゅ、ぐちゅ……。
「えおぉ……っ!?」
 それを皮切りに、娘の肉柱がセジェルの肉関門を打ち付けぶち破り、とうとう彼の肉壺は娘の怒張のすべてを味わわされた。
 内部を無理に押し広げられるという淫らな苦痛に背中の筋肉が脈打つ。寝台についた膝が震え、腰は砕けそうだった。
 セジェルの予想と違わず、むしろそれ以上に身体は敏感に快感を甘受していた。
「へう……んっほ、お」
 セジェルは涎まみれの舌を突き出し、情けなく喘いだ。突き出した舌を昂って粘ついた唾液が伝い滴り、寝台に点々と染みをつけていく。
「全部ずっぽり入っちゃったよ。きゅんきゅん締め付けちゃって、悦び過ぎ。それに気付いていないみたいだけど、また射精しちゃってる」
「んあ、あ、ああ……う、そだ……」
 頭を下へ傾げて自分の股座を覗き込んでみれば、確かにセジェルの肉棒は白い種汁を垂らしていた。しかし勢いも締まりもなく、その上肉棒自体も勃起しているとは言い難かった。それは雌が快感に蜜を垂らすのと同じ。セジェルは雌墜ちの憂き目に遭ったのだ。
「お、お……こんな……」
 雄である事を放棄した肉体は恥辱さえも養分となるようで、セジェルは泣きながらいつ止むともしれない吐精を続けた。
「だらしなあい。内側からお腹殴って気合い入れてあげる」
 どす! どむっ! と上から腹筋へ向かって力強く肉鎚を打ち下ろされる。
「おううぅっ、んご、ご、ごわ、れる……ぅ! 腹がぁ、んが」
 腹に触れると内側から滅茶苦茶に打ち据えられる衝撃が腕に伝わってくる。外側から殴られる分には大した事はないが、しかし内側からとなると覿面だった。
「死ぬっ、ひ、ひへぇえ、お、お゛んん゛ッ、も、勘弁ひへ……ぉ゛っ」
 一突きごとに頭の奥がじいんと痺れて、身体がだらしなく疼く。涙を流すと鼻の奥がキナ臭くなって、洟まで垂らして鳴き喚いた。常ならば高潔で引き締まり、どこか皮肉を滲ませているような顔は、今では完全に肛虐に屈して卑猥さと敗北に塗れていた。
「これくらいじゃ死なないと思うよ」
 セジェルの懇願などお構いなしに娘は自分の快感を追求してくる。
「んひぃ、はひ、ふおお、っお、んお、死ぬ、ひぬから、死んじまうううぅっ……」
「うるさいなあもう逝っていいよ」
 ばちゅばちゅと娘の腰が硬い尻に打ち付けられ、奥を荒らされる。快感の源はがっつりと竿に押しつぶされ、連続で刺激を性器に通される。
「ぉひ、い、いやだ、嫌だあ!」
「いいからさっさと逝きなよ」
「お、おかしくなる、全部、忘れてしまう……!」
「大丈夫。忘れさせないよ、後でちゃんと思い出させてあげる。怒りだとか復讐心だとか誇りだとか全部。今の状況に甘んじさせたりはしない。そうして男を引き留めるのは古今東西魔女だけ。あなたは闘技場に出れば嫌でも自分が何者か思い出す」娘がセジェルの耳元で珍しく優しく囁く。「それにあなたが嫌じゃなきゃあ助けてあげる。もし信用して全部話してくれるなら。だから安心してさっさと逝っちゃって。疲れてきた」
「それはぁ……んあ、こっちの台詞……んううう、ふうっ、ああああ!」
 娘の突きが追い上げるものへと変わる。
「んぇっ、え゛っ、んえ゛ぇ……」
 理性がひと突きごとに散らされ、セジェルの上半身はとうとう寝台に力なく沈む。娘に抱えられ、芯を貫かれている下半身だけが辛うじて残る。
「あ、あ、あ、ぐるっ、い、いぐっ、お゛、女にケツ穴犯されてぇっ……!」
 セジェルの波に合わせたのか、娘の腰が一層激しく動きだす。
「これから将軍の中に、出しちゃうからね。あなたわたしの奴隷なんだからねっ」
 きつく締まった肉壺は娘の竿を種汁が駆け上ってくる動きさえ感じてしまいそうだ。
 ばんっ! とお互いの身体が密着し、娘の昂ぶりが弾けて射精が始まる。
「んぎっ、お、んご、おっほおおお゛お゛ぉ゛」
 粘つく精液に肉襞が翻弄され、だらしなく射精していた肉棒が跳ねまわる。絶頂だった。
 娘は種付けをしながらも果敢に怒張を動かし、征服の証とばかりにセジェルの肉襞という肉襞に種を塗り付ける。
「おっ、んほっ、ほぅう」
 しかしここまで来るとセジェルは耐えきれなくなり、腰をどすんと寝台に落とした。そのせいで抜け落ちた娘の怒張から残滓がセジェルの背に滴った。
「あ、腰抜けちゃった? ごめんね。将軍って若く見えるけど、やっぱりおじさんなんだあ」
 とは言え、ここで手心を加えてなどくれないのがセジェルの主人だ。
「でもほら、運動ってぎりぎり耐えられる所までやらないと伸びないっていうから」
 娘がセジェルの広い背に覆いかぶさり、股間が尻に擦りつけられる。
「い、今がぎりぎり……うあ、ああ!」
 セジェルは娘によって与えられる苛烈な責め苦にまた飲まれていった。

「将軍って、鳥じゃなくて猫だねえ」
 セジェルの隣に横たわった娘が独り言のように呟いた。おそらく獅子との戦いの直前に話した事を掘り返しているのだろう。
 すべて終わらせてすっきりしたのか、その横顔はいやに清々しくて、セジェルにとっては腹立たしい事この上ない。自分は怪我をしている上に、滅茶苦茶に犯されて疲労困憊している。これで怪我が長引いたらたまったものではない。
「お前の飼い猫だと言いたいんだろう」
 セジェルは小さい寝台の上で娘を端の方に追いやりながら言い返す。
「なんでそういうひねくれた見方をするの。それともわたしの猫になりたいの? なら顎の下撫でてあげるから首出して」
「もう部屋に帰れ。どっか行け。怪我人をこんなにしやがって」
 その小さい身体を悪し様に押しのけても、娘はまるで子供のようにセジェルにまといついてくる。
「将軍将軍」
 呼んでくる声だって妙齢の女らしく柔らかいもので、毎度毎度セジェルに対して鬼畜の所業を行うとは到底思えないようなものだ。
「いい知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい」
「いい知らせ」
「父がねえ、すごく喜んでいたわ。ライオンの毛皮を書斎の床に敷けるって。頭も剥製にして応接間に飾るつもりなのじゃないかしら。その分で今回の治療費はチャラにしてあげる。特別よ特別」
 それはよかったよ、とセジェルは皮肉とちょっとした誇らしさをこめて鼻で笑った。
 思った通りに上手くは行かないものだ。
 一撃のもとに首を斬り落とした後も、その身体が惰性か執念で獲物に飛びかかり己の身体を切り裂くなんて、セジェルは少しも考えはしなかったのだから。
「そうねえあの戦いでの勝利を鑑みるに……あなた猫じゃなくてライオンかもね」
 死の瞬間まで足掻き、敵に一矢でも報いる事ができるような獅子となれるのならば、それ程良い事はない。
「それで、悪い知らせは」
「うん。わたしすごくねむいから……今日はここでねることにした」
「おい、怪我人の寝床を……」
 追い落としてやろうかとも思ったが、すでに寝息を立てる物体はこの世で一番無害そうで、一晩寝床の半分を貸してやっても悪い事にはならなさそうだった。セジェルは寝台に散らばる娘の髪をくしゃくしゃと掻き乱した。
 それほど悪い知らせでもなかった、とセジェルは一瞬そう思った。一瞬だけ。本当に、ほんの一瞬だけ。
「んー……金のうんちするロバがげんきになった……よしよし、いいこ、しょうぐん、いいこ……うんちしなー……」
 寝言さえ俗物な娘を、やはりセジェルは床に突き落した。


敗北と価値 終

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