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槍試合

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「ああっ、むお、お……」
 バランタンは暗く切なげな喘ぎを発し、暴虐と恥辱に震えながら絶頂を味わった。その霞んだ不確かな視界の端で、床の上で穢れて凝る己の精液溜まりの中にクロードの精液がとっぷりと注がれ混ざり合うのが見えた。
 
 茫洋とした執拗な後快感はなかなか終わらない。それらは熱や敏感な粘膜となってしばらく彼を苛む。
 埒をあけている間は死んでいるに等しい。何も考えられず身体もいう事をきかない。自分があるようでいてない。それが快感だとわかるのは快感の波が絶頂期を過ぎてゆるやかになった時なのだ。つまり今、この瞬間。バランタンはその重たい頭をクロードの膝に抱かれながら満足げな息を吐き冷たい床の上で身じろぎした。
「わたくしの我儘に付き合って下さってありがとうございました」
 クロードは満足そうに微笑みながらバランタンの下着の乱れを直し、上着の留め具を嵌めてゆく。白い指は弦楽器でも爪弾くかのように器用に動いた。
「気は済んだか」
「ええ。だからお礼を申し上げたのですわ」
 そうは言うが妻には髪にも衣服にも一糸の乱れなく、まるで先程の情交が嘘のようだ。自分ばかりがいいようにされたようでバランタンは面白くなかったが、滅茶苦茶にしてやった所で妻の髪を煩雑な手順で元の通りにしっかりと結い上げ、女特有の鎧のような服を着せてやるのは自分には不可能だったと思い至る。大体そんなものは側仕えの女官の仕事である。
「気に食わんな」
 バランタンは苛つきを持て余し、クロードの感謝を鼻であしらった。
「そんな難しいお顔なさらないで。幸運が逃げていってしまいます」
 妻の声しか捉えていなかった耳に、ようやく外の喧騒が近づいてくる。馬の蹄が地面を抉る音や、槍の先端が鉄を弾く音、そして轟くような歓声。
 身を起こしかけたバランタンの胸にクロードの手が柔らかく添えられた。行動を制された彼は上体を起こしたまま妻に問う。
「いいのか、試合を見なくて」
「もう少しこうしていたいわ」クロードはバランタンの硬い黒髪を撫でた。「構いませんでしょう」
 そう言われて悪い気はせず、バランタンは再び妻の膝に頭を下ろした。
「あなたは勝ちます」
「当たり前だ。私の槍の腕を知らないわけでもあるまい」
「いいえ、今回に限らずです。そしてこんな田舎の城も、領主の座も、より得難いもののために捨て去る日が来るでしょう」
 密やかな祈りは今や祝福か、あるいは予言となりバランタンを取り巻いた。
「だから今はもう少しこうしていたいわ」
 外の喧騒は再び遠くなる。どうせまた青が勝ち赤は負けたのだろうが、そんな事はもはやバランタンにとってどうでもよかった。最終試合での赤の勝利は決まっている。
 クロードがそう言うのだから。


槍試合 終

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