このめでたい門出の日に - 5/5

「んあっ、あい、し……敬愛いたして、おりますっ! しかし……しかし、我々は、決して、結ばれては、ならぬ定め。ですから、おほ、おおっ、姫、姫君、ど、どうかこの私めの、この……エロ軍馬の、胤壷尻ぃんっ! 好きモノの淫売牝馬と思って、今はお好きに、突き回して、使い倒して、胤壷に、種付けひへ、飽きるまで性処理をぉんッ……はひ、これが、これが最後です、どうか情けを、刻みつけて、一生分の……ぉ」
 王女がこの無骨な半人半馬の肉体でいいと言うのならば、騎士長としてはたっぷり使わせて後悔のないようにしてやりたいのだ。そうすれば騎士長自身の心残りも雪げよう、と。
「ああ、最後だなんておっしゃらないで! わたくしあなたと離れるなんて、結婚なんて!」
 自身の境遇へのどうしようもない怒りを騎士長へと転嫁させるかのごとく、王女の追い上げは苛烈さを極める。まるで暴れ馬への調教だった。
 王女の大きく張った肉槍の切先が騎士長の中のか弱い部分を執拗に嬲り始める。その攻めは先に出した胤を掻き出してしまう程の激しさで、騎士長の胤壷の入り口は白いねっとりとした胤が泡立っていた。
「んごっ、ほうぅ、くっほ、オ、むおっ、ほおぉ、ンンッ、そ、そうです、もっと乱暴に、暴行、おっほ、種付けぼうこぉおンッ」
 軟弱な場所に気を籠められる度に騎士長の勃起しきった種汁棒が暴れ、その下腹部をばしばしと叩く。先走り汁が腹の毛に絡まり、離れゆく肉棒との間に汚らしく卑猥な糸を引く。
「オォ、ほおッ、お願いしますうぅ、この惨めな淫乱低俗胤壷に、貴女様の高貴な胤をなみなみと注いで……種付けしへえぇ……ッ」
 騎士長は半ば意識を飛ばし顔を蕩けさせながら哀願する。
「ああ、騎士長殿、そこまで乱れるなんてっ! いいわ、あげます、わたくしのおんなのこ精液!」
 王女が叫び、再び騎士長に胤を渡す。
「はひゅっ、くる゛っ、王族ザーメン、んお、おおっ、はあっ、い、いいっ、あ゛ーッ、胤汁快感でいぐ、いぐうぅっンッ!!」
 絶頂の瞬間、騎士長は再び身体を大きく反らせる。快感を溜め込んだ筋肉が膨張し、鎧が弱音を吐く嫌な音が響く。留め具の弾ける音が一つ聞こえたかと思うと、それを皮切りに次々と留め具の飛ぶ音。そして半身を覆う鎧が瓦解してゆく。
 まずは両肩を守る二つの半球型の防具がその責務を投げ出す。次いで分厚い身体の前面を覆い、数多の勲章が綺羅星のごとく光る胴部が地にどうと落ちる。そして両腕に竜の鱗のように張り付いていた鉄板が雨のように降る。それにつられるように、篭手と指鎧もばらばらと散らばった。最後は仰け反る背につられて、不快な音を立てながら歪みつつも往生際悪く身体に張り付いていた背部が、とうとうその動きに音を上げ滑り落ちた。
 その下には銅製の鎖帷子と麻製の鎧下を身に着けていたが、鋼鉄の鎧を内から突き崩した騎士長にしてみればそんなものは紙にも等しい。フルプレートの下で既に弾け、破れかけていたそれらは溶けるように地に落ちた。
 騎士長は縛めるもののなくなった肉体を嫌というほど引き絞り、いやましに仰け反らせた。
 その姿たるや、よく撓る複合大弓だった。
 王女は最後に騎士長の肉棒を扱き、引導を渡してやる。
「あなたも、楽になって」
 騎士長は快感という苦痛に顔を歪ませて果てた。
 どっぷ、と土に種汁の塊が穢れた溜まりを作る。
「はふンっ、ふお、お……」
 騎士長はその巨体を震わせながら粘度の高い唾液に塗れた舌を突き出し、種汁を打ち出した反動に喘いだ。
 ここでやっと、王女の肉槍が騎士長の胤壷から引き抜かれる。すると散々喰い散らかした王女の胤が、ぼびゅんっ、と胤壷口から吐き出された。騎士長はまた脱肛しながら次々と胤汁を撃ち出す。下心のある女であれば誰でも欲しがるような王家の胤を、騎士長は不敬にも無駄にする。
「ああっ……申し訳ございません、私はなんという事を……」
 騎士長は尻を高く掲げてこれ以上胤がこぼれないようにしながら、地面に這いつくばって無駄にしてしまった王女の胤を啜る。
「ちゅぞっ、ん゛ーっ、んぼ、お、じゅっ、ぐぶ、ん……ッッ」
 それだけに飽き足らず、呆れたように騎士長を見下ろす王女の肉棒も口に含んで啜る。
「はあ゛ッ、ぢゅぷっ」
「あ、やんっ、騎士長殿、そんな事まではしてくださらなくていいのに」
「お心残りのないように、貴女様の雄の気はすべて、私が……」
 騎士長は顔に色を漲らせながら、王女の肉棒から胤を吸い続けた。

 柘植の櫛が髪を梳る。濡れた髪は流れるように櫛の歯を通り抜けてゆく。
 沐浴を終えたばかりの髪の持ち主は、梳られるのが心地よいようで、目を閉じてその身体を馬体に預けてくる。
 この最後の別れの儀式が終わったのなら、当初の予定通りこの櫛は新たな門出の餞に贈ろう、と騎士長は思う。
 白くゆったりとした下着姿の王女は、自分と同じく川で身体を清めたばかりの騎士長のしっとりと濡れた毛をお返しのように撫でていた。
 どちらも喋らず、今は所属を表す衣服を身に着けてもいない。
 こうなっては、一人の女と一匹のケンタウロスだ。森の奥深くで助け合いながらひっそりと暮らす、異種婚礼を果たした夫婦二人。
 もしこのままどちらも現世の話をしなければ、もしかしたら二人だけの世界が始まるのではないかという気配が互いの間には漂っていた。
「姫君、そろそろ婚礼衣装を」
 そんな中で口火を切ったのは騎士長だ。
 王女は木の枝に掛けてある豪奢だが窮屈そうな緑衣を見上げた。そしてその視線を騎士長に移す。
「あなたがわたくしを連れて逃げてくださったら、そうでなくとも、わたくしを少しでも想ってくださっていたらと、願っていたのです」
 でもどうやらそうではないようだ、という言外の落胆が滲む。
「貴女様の事はこの上もなくお慕いもうしております。だからこそ、隣国へお連れするのです。それに逃げるなど、そんな事は陛下と国民の手前できません」
 と、模範的に答えるものの、脳裏では花火のように様々な思惑が弾けては消える。
 王女を無事送り届けたならば、自分は騎士長を辞して人間の国を出ようか。そしてダークエルフの国土のぐるりを囲む森に棲むのだ。少しでも王女の近くにいられるように。
 あるいは本当に王女を背に乗せ逃げるか。二人で暮らして行く分ならば、自然からの恵みでなんとかなろう。王女がそれに順応できるかは別として。
「あなたは父と国にだけ忠誠を誓っていらっしゃるのですね。でも、こうなってはあなたは忠誠心など失うでしょう。信じられるのは真に愛するものだけと知るのですよ」
 騎士長は穏やかでない風の動きを感じ取る。風を切って飛来した弓が騎士鎧の胸の中心を貫く。その威力たるや、生身に受けていたらひとたまりもなかったろう。と壊れた鎧を盾代わりにした騎士長は戦々恐々とする。
「何奴!」
 騎士長の怒声に答えるように木陰から飛び出して来たのは、フルプレートの上に、逆さ十字の紋章布を纏った邪教の一派。ダークエルフ達だった。
「我等は敵ではない、婚礼のために」騎士長はここまでで説得を諦め、先人切って躍りかかってきた一人を自分の装備の残骸から拾いあげた弩で撃ち落とす。「なぜだ、ここはまだ我が王家の領地のはず」
「では、ダークエルフではないのでしょう」
 王女はこともなげに言い、騎士長が地に突き立てたランスに手をかけた。
 ランスを通して広い空に魔法の電雷の網が散った。

「あなた、お強いのね。私の出る幕が一個もないのですもの。いつも遠征に行かれる時には心配で礼拝堂で祈っていたけれど、そんな必要なかったのですね」
 死屍累々の山の中、王女は返り血で裸体を濡らす騎士長を見上げてうっとりと呟いた。
 騎士長の働きは、千切っては投げ千切っては投げの、文字通り、人馬一体、一騎当千のそれであった。王女の加勢も幾分かあったとはいえ、一個小隊を蹴散らすその気力と腕力には目を見張るものがあった。戦闘種族とはいえ、普通のケンタウロスではこうは行かない。卓越したセンスと日々の鍛錬の賜物であろう。
 その騎士長は、今は一人残った不逞者の長を地に何度も叩きつけ痛めつけているところであった。「腹心の部下だと思っていたのに、私に剣を向けるとは!」それは王国の副騎士長だった。
 こうなった経緯は実に簡単であった。
 ダークエルフに個人的私怨のある国王はかねてより武力によって仇敵を貶めたいと願っていた。しかし穏健派の大臣や日和見の民はそれをよしとはしなかった。だからこそ戦争の火蓋を切るための生け贄が必要だったのだ。つまり誰からも愛される美しい王女と、数々の武功を立て民からの信頼も厚い騎士長が。
 婚礼として呼びつけられ、この二人が同時に、あるいはどちらかが無残に殺されたのならば、穏健派も日和見主義者も決起せずにはおられまい。
 そしてダークエルフ側も無辜の罪をかけられたならば、種族の威厳と矜持のために戦争も辞さないだろう。
 そのために国王は副騎士長に次期騎士長としての地位をちらつかせ、彼の小隊にダークエルフの扮装をさせて二人を襲わせたのだった。
 国王の誤算は自分の部下と娘の実力を見誤っていた事だ。そして、王女に計画を勘付かれていた事。
「気づいていたのなら、私に教えて下さってもよかったのではありませんか」
「ごめんなさい。杞憂で終わればいいと思っていたから、余計な心配をかけたくありませんでした。父が計画を思い留まってくれたらと、どこかで願っていたのね」
 王女は婚礼衣装を引き裂き、騎士長の身体を濡らす血を拭ってやる。
「ダークエルフと正面切って戦をするためだけに自分の娘を殺そうとするとは……」
 騎士長は部下だった男を地に落とし、独り呟く。
「半陰陽の王女の使い道としては妥当です。半陰陽の妃を持ちたい王がどこにいるでしょうか。それに、父は半陰陽のわたくしを疎んじておりましたから」ふと、寂しそうな顔をする王女。「それで、あなたはこれからどうするのですか、騎士長殿。ケンタウロスの地にお帰りになるの」
「騎士長と呼ぶのはもうおやめください」
 騎士長はすでに国王への忠誠というものを失っていた。自分の生命の存続を揺るがされた事よりも、王女を苦しませた事が許せなかった。
 騎士長は地の上をこそこそ這うように逃げる男に言い放つ。
「国王には我々は死んだと言うがいい、薄汚い豚。そしてお前は国王から打診された通り、騎士長になるがよかろう。私達の首実検が必要ならば」騎士長は近くに転がる二つの死体から首を狩り取り、逃げ出す副騎士長の背に投げつけた。「死ねば面差しも変わる。女と男の首ならば何だって構わんだろう。ダークエルフとの戦争で、あたら拾ったその命、捨てる事にならなければいいが!」
「わたくし、自分の子供にはいのちだいじにと教えますわ。二つの命を簒奪せんがために、こんなに血を流すなんて馬鹿げていますからね」
 血で真っ赤に染まった川の傍らに座す王女に騎士長は手を差し伸べた。
「もし私が王であったならば、あなたを喜んで国に迎え入れるでしょう」
「ありがとう、嬉しいわ」
「しからば、参りましょう」
「逃げるのですか」
「その必要はありません。私達はもう死にました。死者は逃げません」
 騎士長は己の手を握ってくる小さなそれを
しかと握り返し、その背に乗せた。
「これからどうするか、どこへ行くかは決めていません。ただ、貴女の事は連れて行きます」
「どこまででも、ついてゆきます」
 王女は騎士長の裸の背に身を預けた。
 騎士長は幸せな重みを背に、歩を進めた。ゆっくりと、着実に。
「あいしておりますわ、騎士長殿、いいえ、わたくしのケンタウロス」
 王女のゆったりとした白い下着が穏やかな風をはらみ、空を泳いだ。
 なんとめでたい日だろう!
 ケンタウロスは高い空を仰ぐ。
 雲一つない晴れた空は新しい世界へ踏み出す二人をどこまでも祝福していた。

このめでたい門出の日に 完