信頼と栄光 - 2/6

 セジェルは娘に背を向け、砂と汗を拭くための濡れた布を取った。まだ身体の高ぶりは治まらず、心臓が高鳴っている。
「わたしは女よ。あなた雇い主に向かって本当に不敬だわ。ベッドの中ではあんなに従順なのに!」
 セジェルは声を荒げる娘の方を肩越しに睨みつけた。けれどもそんな眼差しに効力はなかった。
「ね、やっぱりまだ昂っているのでしょ」
 広く堅い峻厳な断崖のような背に身体を預け、娘はセジェルの下腹部に手を伸ばした。腰布に覆われて見えはしないが、触れればそこはすっかりと出来上がっていた。
「あっ、ぐあ、触るなっ!」
 調教通りの卑猥な肉体になった事に娘はほくそ笑んだ。
 セジェルは力では優るというのに抵抗さえしようとしない。ただ両の手で目の前のテーブルにしがみついて震えるだけ。
「嫌なら抵抗したら」
 セジェルは眉根を寄せて反抗しようと口を開く。
「お前をぶちのめしても何にもならない。俺には這いあがってでもやらなきゃならん事がある。だから」
 仕方なく受け入れて利用している、と言いたいのだった。
「ああ、なんて可哀そうなんでしょう。復讐を胸に誓う零落れた軍人が、敵国の暴虐な雇い主に捕まって!」
 娘は芝居っぽく言うと、セジェルの腰布を弄りかき分け、男の象徴を露出させた。天に向かって勝利を叫ぶようにそそり立つそれを見て、娘はいやらしく笑った。
「高潔な栄誉将軍ともあろう方が、こんな非力な女に金で買われて、おもちゃにされるんだもの」
 セジェルは悔しさを顔に滲ませながらも、これから起こるであろう暴虐の嵐を想って顔を紅潮させた。何をされるか大体想像がつく自分が厭になる。
 これまでも娘は毎日の訓練の後セジェルを凌辱してきた。最初は無理矢理薬を使って彼を調伏し、その秘められた性感を開花させた。薬がいらなくなってくると、今度は巧みな性技で彼を籠絡し、めくるめく肉欲の虜にした。
 今となっては、そのさ中では戦士ならではのものであった昂揚感が、戦闘の後になると背徳的なそれに変化する肉体になってしまったのだ。
「あなたは戦いの後の覚めやらぬ興奮を、淫らな肉の交わりでしか解消できない身体になってしまったの」
 娘のほっそりとした指がセジェルの肉体を這う。筋肉の溝をねっとりとなぞり、その渓谷を愉しむ。
「ん、ああ……」
 セジェルは熱に浮かされ、徐々に身体の力が抜けていく。赤銅色の健康的な筋肉が震え、汗が滴る。
「なんて素晴らしい肉体。汗で砂が張り付いて、ああ男らしいわ」
 娘の甘い吐息がセジェルの身体にかかり、いやましに性感が高まって行く。
 後ろから回された娘の手がセジェルの肉棒を荒々しく扱いた。
「ああ゛ッ、は、ぐお、おおぉ」
 予想もつかない動きをする分、自分で扱くよりも格段に善い。何度か訓練の後の熱を己で鎮めようとした事もあったが、調教し尽くされて隷属させられた肉欲はセジェルの手を拒むようになってしまっていた。
「は、んおっ、あ、ああぅ」
 野太い喘ぎ声を上げながら、セジェルはあまりの快感に娘の手から怒張を逃がそうと尻を後ろへ突き出してしまう。
「あ、忘れていたわ。こっちもちゃんと開拓してあげないとね」
 娘は突き出された引き締まった尻たぶをかき分け、その中心で快感に震えている熟れた肉穴に中指を埋めた。
「くおぉんっ、お、くおぉ……!?」
 中で容赦なく指を動かされ、肉襞を広げられ、捏ねまわされ、覚えたての創られた善い場所を引っ掻かれる。
 どっしりとした肉棒は次から次へと垂れ落ちる先走りを全体に塗り広げられ、肉欲の溜まりに溜まった睾丸ごと激しく扱き上げられる。
 セジェルはがくがくと震えながら前から後ろから襲い来る悦びを身体一杯に溜めてゆく。天井を見据えた顔はだらしなく蕩け、精悍さの欠片もない。
 娘の手の中でセジェルの肉棒が震え、肉壺が痙攣するように締まる。娘はその動きに絶頂を見てとり、動きを止めた。
「は、ああぁ、あ……?」
 セジェルは快感の涙に潤んだ目を下に向けた。いつの間にか前に回っていた娘が肉棒の前に跪き、彼を見上げて妖艶に笑んでいる。
「こんな所で吐精するなんてみっともないわ。だから後でうちでしましょう」
 みっともないなんて何を今さら、とセジェルは熱の溜まりきった身体を持て余しているせいで不平を覚えた。
「だから、それまで我慢できるように」
 娘は髪を束ねているかんざしの一つをするりと抜き取り、ちゅぷりと鋭い銀の突端を舐めた。嫌な予感にセジェルの背がぞくぞくと粟立つ。
「これ銜えててね」
 冷たい先端が先走りを垂らすセジェルの肉棒の穴に宛がわれる。
「待て、やめ……」
 ぐちゅ。
 その衝撃はセジェルの身体の中心を貫くかというくらい苛烈だった。一気にかんざしを尿道の奥まで差し込まれ、冷たい拷問器具に苛まれる。
「くぉほおおおっ!?」
 セジェルはテーブルに取り縋って鳴いた。腰は快感に飛び、解放を求めて開く唇は涎を垂らす。
「うぐぁ、ごっ、んおおぉ……」
「あら、まだ教える事が沢山ありそう。全部試してしまったと思ったけれど」
 新たな責めに悶える男を目の前に、娘は嬉しそうにのたまった。

 それからどうやって市内にある邸宅の娘の部屋に到着したのかセジェルには思い出せなかった。
 絶頂したいという欲求に支配された頭は靄がかかっていたし、今もそうだ。
 セジェルは長椅子に沈みながら、ぼんやりと部屋に設えられた大きな浴槽で身を清めている娘を見ていた。
 大理石のように白く柔らかそうな肌。膨らんだ愛らしい乳房。胸に垂れる豊かな髪は王家の黄金。
「そんなに見つめられたら穴が開くわ」
「見ていない」
「あら本当?」
「……興味ない」
「女の身体に興味はない?」
 娘は身体を見せつけるように浴槽から立ち上がる。
「じゃあ男ならいいの?」
 湯の滴が胸の頂点から垂れ、滑らかな腹を、括れた腰を舐め、下腹部に収束してゆく。
 セジェルはその行方を目で追い、生唾を飲んだ。そこには彼の良く知る雄の象徴が雄々しく屹立していたのだから。
「やっぱり見てるわよ。今喉を鳴らしたわ」
 娘は股間を隠しもせず、身体を布でさっと拭き取り裸足でセジェルの前まで歩み寄った。
「わたしの秘密を知ってるのは両親とあなただけよ」
 娘はセジェルの綺麗に剃り上がった頭を掴み、自身の股間に導く。
 娘は両性具有だった。
 セジェルはその屹立する肉碑を処女地に突き立てられ、散々征服の証を刻み付けられて来たのだ。今ではそれを見るだけで、畏怖し平伏してしまいそうになる。
「わたしの弱みを握れて嬉しい? バラすと恫喝されても別に痛くも痒くもないけれど。あ、それは別に弱みとは言わないわね。で、わたしはお返しにあなたの秘密も聞きたいんだけれど」
「俺に秘密なんて……ない。お前に話した事が俺のすべてだ。エジプトの栄誉将軍にして第十五艦隊提督。艦隊は先の海戦で殿を務めて水底に消えた。そして俺は不名誉な事に捕虜になり、お前に買われた。それだけだ」
「それだけじゃないはずよ。誰かに復讐したいのでしょ。あなたの瞳の底には不屈の炎が燃えている。わたしにこうして組伏されている時でもね」
「だとしてもお前に洗いざらい話すと思うのか。敵国の人間に!」
 怒張を唇になすりつけられ、その余りの雄々しさに視覚を、雄の匂いに嗅覚を犯されながらも果敢に主人に食ってかかるセジェル。けれど顔は紅潮し、息も荒い。
「もうすっかり淫らに出来上がっているのね。さて、こういう時はどうするの?」
 主人は奴隷を見下ろして調教の成果を問う。
「くそっ……終わるまで俺を帰さない気だろう」
「別に帰ってもいいのよ。どうぞセジェル将軍、扉は開いているし、わたしはあなたが出て行っても絹を引き裂くような声で叫びやしないわ」
「信じるものか」
 セジェルはそう吐き捨てると緩慢な動作で椅子から降り、屈辱を顔に滲ませておずおずと娘の肉碑を銜えた。長く太いそれを喉奥まで導き、教えられたとおりに狭めて刺激する。舌は突き出し、丸めてしっかりと野太い筋に沿わせる。そして緩く頭を動かして熱い粘膜で悦ばせる。無骨な手は娘の腰や尻、そして内腿を壊さないよう優しく愛撫する。
「ん、ぶ、ぐぼ、っが」
「あなたの涎、わたしの女の器の方にまで垂れて来てるのよ。そんなに涎が出ちゃうくらい美味しいの」
 セジェルは苦しみに顔を歪めながら娘を反抗的に上目遣いで睨んだ。
「美味しいわけないって顔してる。けど上手になったわね」
 娘はセジェルの口内の卑猥さに昂りを感じていた。
「ご褒美あげる。自分のを出していいわよ」
 セジェルが抗い、何もせずに義務だけ果たしていると、娘は皮算用している時のように厭らしく微笑んだ。
「あなた頭がいいはずなのに、時に自分の矜持に愚直ね。言う事聞かなきゃどうなるかよおく分かってるでしょ」
 セジェルは焦りに震える手で腰の革ベルトを外し、腰布を取り去った。一度抗い続けたせいで薬を大量に盛られ、滅茶苦茶に蹂躙された事を思い出したのだ。
 お預けをくらって勃起したままの肉棒が反り返り、逞しい腹筋に触れる。その笠の先端には娘のかんざしの花飾りが咲いていた。
「ほおら、物欲しそうにしてる」
 娘の裸足がセジェルの勃起した肉棒に触れ、それを床に押し下げる。熱い肉棒が冷たい大理石の床と温もりのある足の板挟みになった。
「ぐごおお!?」
 凝り固まった肉棒を無理に足で押さえつけられたせいで、腰に痛みが奔る。しかしそれは快感への上り坂でもあり、すぐに愉悦に変わる。
 あまり歩かないせいで赤子のそれのように柔らかな足裏が激しくセジェルの肉棒を扱き始める。
「おっ、んおっ! ほ、お゛おお!!」
 セジェルは唇の端から唾液を垂らしながら悦んだ。