しとどに濡れた雌穴に、恐ろしいほど巨大な怒張が飲みこまれていく。
「んむふっ、ふむぅ……」
バランタンは歯を食いしばり、腰を進めていく。
「あら……あら」
クロードは驚いているにしては惚けた声を上げた。
「歯を食いしばるのはよくないわ、力を抜かなきゃあ」
「そんなっ、くお、おおッ」
自分で自身の肉穴に挿入させるという行為は、その逆よりもずっと大変だった。
それを拒む己の肉壁を、自分の意志で、異物を招き入れ広げなければならないのだ。
「んふ、すごくいいお顔だわ」
クロードの顔の横に手を突き覆いかぶさるバランタンの顔に、冷たい手が当たる。
「わたくしそのお顔すき」
「んっ!?」
予期せぬ甘言にバランタンの腰が砕け、自重で怒張をすべて飲み込むはめになる。
「おおお、おおほおッ!」
突然貫かれた衝撃と快感に、バランタンはぐったりとクロードの上に倒れ込んだ。
「んんー、重いです……」
「すまない、だが……、ああ、ふんんっ……ふほ、ふーっ、ふうぅ」
尻を抉る存在感に喘ぎ、息を整えようと膨らんでは萎む背に、クロードの手が回る。
「すごいわ、天使のよう」
汗ばんだバランタンの背中にまといついた枕の羽毛を摘みながら、クロードはうっとりと呟いた。
「私……が?」
「ええ」
バランタンは性感に障らないようにゆっくりと上体を起こし、クロードを見下ろした。
クロードの方がずっと、バランタンにとっては天使めいていたが、そう言われて悪い気分はしない。それどころか……。
「羽根が生えているもの」
羽毛を摘んだその指にバランタンは接吻を落とした。
そして、腰を引き上げた。
「うごいて」
クロードの極上の酒のような唇がそう紡いだような気がしたからだ。
後は己自身でクロードに激しく征服させる。
「はっ、ふはっ、おお゛、くほおっ!」
間違いなく自身の意思で自分を凌辱させている背徳感が快感を生む。
夜中にこっそりと城門を開いて敵軍を引き入れた裏切り者、そんな気分だ。
「立派なお身体ね」
クロードの言外の要求を汲み取り、バランタンはクロードの顔の横についていた腕を、自身の身体の後ろの位置までずらす。
堂々たる肉付きの胸が前面に張り出し、上半身が膨らみ、筋走る。クロードの眼前に曝け出された太腿は、腰が沈む度に一回り盛り上がる。
クロードはバランタンの肉体をこよなく愛好していた。
それ故に、クロードは時にこうした性交とは関係なく、夫の身体を見たがる事があった。
その度にバランタンは、上半身裸でツバイヘンダーを振るってやったり、薪割り用の手斧をぶん投げてやったりした。最後には、感嘆するクロードに、これで満足か、と聞いてやるのだが、そんな悪趣味を皮肉る厭味も虚しく、結局は欲情したクロードに襲われるのであった。
「どうだ、これでっ、あっ、んあっ、満足、かっ」
いつもと同じく聞くが、やはり情欲に塗れた声では厭味もなにもない。
それも、厳つい眉は緩み、鋭い目は周りを朱に染め、いつも引き結ばれている唇はだらしなく開いているのだから尚更だった。
抜き差しの度にびくびくと脈打つ腹や太腿の筋に、クロードの柔らかな手がねっとりと執拗に這う。
「ええ、すごいわ。ほんとうにすごい、芸術的だわ」
クロードは嘆息した。
「んっ、むうぅ……」
バランタンの中を抉るクロードがいやましに大きくなったように感じる。あるいは、肉の悦楽にバランタンの中が狭まったのか。
バランタンの中心は掘りこまれたせいでまた勃起し、肉壁はクロードの精を強請るように厭らしくうねり、射精を促し始めた。
「ふしぎ。あなたがご自分で跨って、こうして腰を振りたくるなんて。それで、これはわたくしが中で達してもいいという事ですの」
クロードが清廉でしかし淫靡な笑みを浮かべる。
「そっ、そうだ、いいっ、出せ、奥で全部っ」
「でも、中で出したら後で大変だわ」
「いいからっ!」
共に絶頂したいバランタンは自身の射精感を一心に押しとどめながら、クロードに命令した。
「私の中に種を付けろ、早くッ!」
「わかりました、旦那さま」
そう言われるなり、バランタンの腰が下から突き上げられた。
「くほおおっ、んおぉッ!?」
バランタンの動きと相まって、それは極上の快楽となって肉体を駆け抜けた。
「あっ、あああ、クロード、もう……」
「ええ……ええ」
そう言ってバランタンが腰を落とすと、クロードも重たい大の男の尻に負けずに腰を天に押し付けた。
バランタンはその衝撃に、天を仰いで慟哭した。
「ごおおっ、くほ、っおおおお゛――!!」
死に到るかのような悦び。
まるで頭でも殴られたかのように、意識が揺れる。
バランタンの怒張は、またもや精を空に噴き上げた。
「ああ、んはぁ、バランタンさん、ああ……」
クロードの快感の証も奥にしかと注ぎ込まれ、爪先から頭の天辺まで、クロードで満たされる。
それでもなお、バランタンの貪欲で淫乱な肉壁は、クロードを求めて誘う動きをやめない。
「すごいわ、止まらないの、きもちよくて……!」
バランタンは断続的に続く激しい本流に掻き回され、流される。
「ふうぅ、あうぅ、多い……ッ! 孕む、あ、ぁ、孕むうぅ――!!」
それの欲を受ける度に、厭な記憶も何もかも、すべて雪がれていく。
そして多幸感を孕み、バランタンは寝台に沈んだ。