ドゥーベ氏はイザドラに背を向け、また執務机に身体を倒した。そして、法服をたくし上げ、でっぷりとした尻を妻に晒す。
何度となくとった体位だが、いざ自分からするとなると恥ずかしい。しかし、愛する妻のためならば、どんな恥ずかしい事でも、どんな危ない事でもしてやりたくなるというもの。
そんな自分に酔いながら、ドゥーベ氏は自分で尻たぶをかき分けた。谷間のそれがひくついてイザドラを誘った。
「いやらしいおしり。そんなものを見せられたらわたくし、どうしようもなくなってしまうわ」
「んおっ、ふうぅ、あぁッ!」
イザドラの指が肉の入口を広げた。
「何度もわたくしに犯されて、お淫ら慣れしてしまったのね。少し黒ずんでしまったみたい。それに、すごくいやらしいわ、蜂蜜が中でねっとり糸を引いているのよ」
「あっ、いやだ、言わないでくれ、そんなっ」
「うふふ、はあい」
イザドラがドレスをたくし上げる衣擦れの音が聞こえ、重たいそれがドゥーベ氏の腰に被せられた。そしてイザドラの手が、中がどろどろになり果てた彼の腰にかかった。
ドゥーベ氏は生唾を飲んだ。
ぱちゅっ!
「んんおあああっ!」
一度に全部入れられ、ドゥーベ氏は鳴き叫んだ。
一時に広げられた肉穴が、これ以上ないという程イザドラの巨根を感じていた。
「すごおい、とろとろでぐちゅぐちゅで、あっつくて、わたくしを悦ばせてくれているようだわ。女の人の中って、こんなかんじなのかしら……」
ドゥーベ氏の背に寄り掛かりながらイザドラが呟いた。
「……それは、喜んだ方が、いいのかね」
「褒めていますのよ」
「そんな……っあ!」
イザドラが動き始める。
「あっ、んおっ、くほっ、イザドラっ、イザドラ早いいぃっ!」
のっけから最後めいた余裕のない荒々しい腰遣いに、ドゥーベ氏が喚いた。
「だって、がまんできませんもの。一週間ぶりですのよ」
腰にイザドラの指が痛いほど食い込むが、それに優る快感が腰の奥から湧きあがる。
激しい責めに、執務机がガタガタ音を立て揺れ、ドゥーベ氏は尻から手を離し、とっさに机の端の装飾に縋った。
ばちゅ! ばちゅ! ばちゅ! どちゅ!
ドレスの下に厭らしい音がこもる。
「ブリュノさん、あんまりしめつけないで」
「くおおっ、君がっ、おおっ……お、大きいんだっ、ふおぉっ……」
ドゥーベ氏の肉穴から掻き出された蜂蜜とイザドラの先走りが、睾丸と内腿の立派な筋肉を伝っている。その感触さえも淫らな欲望の炎に油を注ぐ。
お互いの熱が混ざり合い、服を着ているせいもあって、身体に熱が籠る。ドゥーベ氏の厳つい額に汗が滲んだ。
ばちゅん! どちゅっ! ぼちゅっ!
「んおおおっ、ほおおっ、ふほッ!」
遠慮なしに突き上げられ、執務机が揺れる。燭台と本が喚き、署名しきっちり纏めた書類が空に舞う。インク壺が倒れ、羽ペンにその滴が跳ねた。
「はっ、ふはっ、んむぅ、っく、くは、あ゛……」
傷一つない執務机に、激しい緊張と官能で粘度の高くなった唾液がとろりと滴る。
背後の窓の外からは馬車や騎馬訓練の輻輳が、廊下からは忙しく駆け回る部下達の靴音とざわめきが漏れ聞こえてくる。
ドゥーベ氏の眉が顰められる。どうしてこうなった。どうして。
結局は自分が撒いた種だ。
自分がイザドラと出会い、縁を作り、それを断ち切ろうとしない。
肉欲が故に。
それよりも、愛しく思うが故に。
「ね、何か別の事考えてらっしゃるでしょう。今されてる恥ずかしい事、わたくしの事だけ考えて」
ドゥーベ氏は自身の今の状況に思いを馳せる。
仕事場で犯されている事。凌辱めいているが、しかし和姦で、相手は愛する妻だという事。そして、妻の野太い男根で後ろから掘りまくられ、淫売のように喘いでいる自分の事。
「ふほぉっ、おおっ、ぶお……」
ドゥーベ氏の男根は前立腺を叩かれる度に先走りを吐き出していた。
「あん、わたくしそろそろ出ちゃう。あなたの中に出しちゃうの」
イザドラが可愛く鳴いた。
ドゥーベ氏も腹筋がひくひくと震え、絶頂が近い。
がつ、とイザドラがドゥーベ氏の前立腺に笠を押し付けた。
「ああっ、があぁ――!!」
ドゥーベ氏は雄々しく叫びながら達した。男根から白い欲望を噴き上げながら。
「んや、ブリュノさん、きついの、やあぁ、止まらないっ」
イザドラはドゥーベ氏の背にしがみ付き震えながら、一週間分のこってりとした精液を流し込んだ。
濃い本流に肉壁を侵食され舐められ、ドゥーベ氏は達した後にも関わらず、執拗な後快楽を味わわされた。
「んっほ、ほおぉ、くおっ、ふほ、ふーっ、ふはっ……」
執務机にぐったりと上体を凭せかけ、荒く息を吐きながらイザドラが落ち着くのを待った。
「ああ、はあ、すっきりしました」
「でもまだやるのだろうな、君は」
ドゥーベ氏は諦観の念を漂わせた、哀れを誘う表情で言った。
肉穴の中のイザドラは、大きさも硬さも損なわれてはいなかった。
「まあ、よくわかりましたわね。でも、一度すっきりしましたから、だいぶん余裕がありますわ!」
そう誇らしげに言われたが、ドゥーベ氏にはイザドラの、余裕という名の悪魔的なそれは歓迎できなかった。
イザドラの二度目の肉穴凌辱が始まった。
ばちゅ、ぶちゅっ、ぶぼっ!
「んぶあ、ふおおっお、ごおおっ」
ドゥーベ氏の陰茎が、無理矢理に再び欲を望まされ、うっすらと立ち上がりはじめてしまう。
そして、先に出された精液を肉穴の中で攪拌され、慄く肉壁にすりこまれる。
「こんなに弱いなら、大昔の貞淑な妻のように貞操帯しなきゃあだめね。他の人に犯されない様に。コルセットもなさる? 姿勢がよくなりますのよ」
ドゥーベ氏の男根を見て、そして、物欲しそうに締め付けてくる肉壁の感触から、イザドラは夫の快感を悟って言葉で責めた。
「ふ、ふううっ、だ、誰もっ、私を犯したりなんてっ、しないッ!」
君以外は!
ドゥーベ氏は息も絶え絶え言った。
「でも、ブリュノさんのお身体いやらしいもの。そのドレスのような法服を着ていてもよ。それに、ブリュノさん流されやすいから、口説かれたら夢遊病のように着いて行ってしまうでしょう」
「いっ、行かない! それに、流されやすいって、それはっ」
君にだけだ!
「ああ、ああ、貞操帯よりもいい事を思いつきました」
イザドラが動きを止め、後ろで明るい声をあげた。
しかしドゥーベ氏は、彼女の思いつきは大抵碌なものではない事を嫌というほど知っていた。
イザドラは羽ペンを手に取り、倒れたインク壺から流れている黒い川にペン先をちょんちょんと浸した。
きれいな所作だ、などとドゥーベ氏が考えていると、突然尻たぶが引っかかれた。
「ひうっ、うあっ!?」
「動かないでくださいな」
引っかかれたと言っても、痛みはなかった。しかし不快な感覚である事は確かだ。
「なに、なにをっ」
「署名しただけです。ブリュノ・ドゥーベはわたくし、イザドラ・ドゥーベ夫人のものですって。それは右のおしりね」
そう言ってイザドラは右の尻たぶを、ぺち、と軽く叩いた。
「ふひいっ!?」
叩かれた衝撃に、ドゥーベ氏は鼻を鳴らして悦んだ。こうされるといつも、屈辱と突き抜けるような快感がない交ぜになる。彼は、自分では決して認めないが、尻を叩かれる事で昂るのだ。
「それで、左にはこう書きますの。ブリュノ・ドゥーベはおしりでカンジる淫乱ちゃん」
「や、や、やめっ……」
「あら呼び捨てはお厭なの? では警視総監殿と書きましょうか。それとも閣下、ブリュノ君……あ、くまさんにしておきますね」
非情にも、ペン先が柔肌を冒していく。そして仕上げの合図に尻たぶを軽く叩かれる。
「あっ、ああああ……」
ドゥーベ氏は絶望し、机に顔を押し付けて力なく喘いだ。
「これで安心だわ。これならわたくし以外の誰にもお尻を見せられませんし、一緒にお風呂にも入れませんもの」
「いやだ、ああ、こんな仕打ち、ああ……」
嘆いてはいたが、しかし被虐嗜好なドゥーベ氏の肉体は、正直に悦びをイザドラの肉棒に伝えた。
「やんっ、いきなり狭くしないで」
イザドラは絶頂する寸前に、素早く腰をドゥーベ氏の尻に深く押し付けた。
ぱちゅっ!
「んむっ、ああああ!」
前立腺の奥までそれを突っ込まれたせいでドゥーベ氏はまた絶頂し、イザドラにも奥にたっぷり種付けされてしまった。
「ふう……虐められるとすごおくいやらしくなりますのね。自分でわたくしのいやらしいお汁を搾りとって」
ドゥーベ氏は疲れきって、肯定も否定もするどころではなかった。力の限り否定したいところではあったのだが。
ぶじゅ。
「んお、へおおぉ、えぉ……」
濡れた音と共にイザドラが引き抜かれ、ドゥーベ氏は犯されやすいように掲げていた尻を震わせながらまたもや机に沈んだ。
「お疲れのよう。椅子に掛けられたら」
イザドラに促されるまま、ドゥーベ氏は椅子に座った。
「ああ、はあ……」
どさりと座った衝撃に、腰が軋んで痛んだ。
「お顔も涙だとか鼻水だとかでとろとろ。本当にお淫らな事がお好きみたい」
「ふうぅっ、ふす、はあぁ……こんな事が好きなのは、君……君だろう」
その言葉がまずかった。それはイザドラの劣情と嗜虐心を煽ったようだった。
イザドラの目が光り、微笑んだ。それこそ妖艶な毒婦のように。
後悔と言うのは、後から悔いるから後悔というのである。ドゥーベ氏は戦慄した。
「そうですね、おっしゃるとおり、わたくしはお淫らなことすきだわ。だいすきだわ」
イザドラの手が椅子の肘掛けに乗せられ、ドゥーベ氏の鼻先にその甘い花のかんばせが突き出された。
「でも、よくよく考えてみれば、わたくしに肉の悦びを教えたのはブリュノさん、あなたですもの。お忘れではありませんわね、あなたと出会って初めて、わたくしは肉欲を覚えたのです。寧ろあなたに、無垢で無知で純粋な処女をこんな淫乱にした責任を取っていただかなくてはいけませんわね、ブリュノさん」
とんでもない理論にドゥーベ氏の広い背筋が粟立った。逃げたいが、身体が動かない。今の彼は蛇に睨まれた蛙だった。蛇に丸呑みされる事に興奮する蟇蛙。