「あんよ上げて」
「い、言われて素直に私が」
そうすると思うのか!
ドゥーベ氏がそう言い終わらないうちにイザドラが声を被せた。
「誠意を見せていただかなければいけません、誠意を」
ドゥーベ氏は嫌々脚を広げた。丸太のように太い脚は、椅子の肘掛けに阻まれて、ふざけたように少ししか開かなかった。
「きちんとしていただけないとわたくし、贖罪と称してあなたをどうしてしまうか」
思案を装った残虐な表情で内股をぺちぺちと叩かれ、ドゥーベ氏は青ざめた。これ以上こっぴどく犯されるというのは、勘弁願いたかったのだ。
ドゥーベ氏はキュロットを緩慢な動作で脱ぎ捨てると、快感に砕けて言う事を聞かない重たい脚を一本ずつ両手で抱え、椅子の肘掛けに乗せた。
腰は座面の浅い部分までずり落ち、上体は気だるげに背凭れにしなだれかかる。勿論、羞恥に震える尻の穴は丸出し。極めつけは、身体を動かしたせいでそこからとろりと滴り始めたイザドラの快感の残滓。
まるで娼婦のような体勢であった。
羞恥に身じろぎする度に椅子が軋み、身体に堪えた。
「好きなだけすればいい、もう私は、もう……君の性欲処理の玩具でも構わん」
そんな体勢を自ら取ったにも関わらず、ドゥーベ氏は屈辱に唇を噛みしめ、俯く。
「うふ、屈辱にまみれたお顔も男らしくて色香がありますのね」
イザドラに顔を持ちあげられ、噛みしめたせいで白くなった唇をそろりと舐められる。導かれるようにドゥーベ氏は舌を出し、それの愛撫を享受した。
舌を絡めている間に、法服をシャツごと捲り上げられ、その裾が彼の口元に宛がわれた。
「これを噛んでいて。ご自分の唇を噛むよりもずっと健全だわ」
言われるがままにドゥーベ氏はそれを噛みしめ、イザドラの到来を待った。
イザドラはというと、ドレスを捲り上げ、太い肉棒をドゥーベ氏に見せつけた。
「これほしい?」
ねち、と顔に性臭のするそれを押し付けられ、ドゥーベ氏は必死に頷いた。
「んんふ! ふううう!!」
吐息は昂り、獣が唸っているようなそれになっていた。
「はい、息吐いて」
肉穴にイザドラの男根の先端が沿う。淫乱な肉穴は、イザドラのそこから溢れる先走りを嬉しそうに啜るかのように蠢いた。
「ふ、んふうううぅ……」
ドゥーベ氏の肉厚な腹筋がへこむに従い、イザドラが彼の肉をかき分け、奥を尋ねる。せり上がる腰をがっちりと掴まれ、着実に中を検められていく。
「んんんぐ、ぐんううう」
ドゥーベ氏の精悍な眉がハの字に垂れ、蕩けた顔を一層淫らに彩った。
「はい、これでぜんぶ」
イザドラの細い腰と、ドゥーベ氏の太いそれが触れあった。
「ふっ、んふぅ、うっ、ふうぅ……」
全身をびくびくと痙攣させながら、ドゥーベ氏はイザドラの再訪を悦んだ。
「誠意を見せてくださったのですもの、あまり手荒にするのはかわいそうだから、慣れるまで待ちますわ」
手慰みにイザドラはドゥーベ氏の肉体に触れた。
うっすら六つに割れて恥じらいに震える腹筋、浅い呼吸に乱れる胸筋。その両方に脂がのり、熟れてはちきれんばかりだった。そして獣のように濃い体毛が、浅黒い肉体をもっと野性味溢れて見せていた。
「いやらしいおむね」
宝探しでもするかのように胸毛をかき分けられ、それに押し隠された桃色のぷっくりした乳首を摘まれる。
「んおお、んご……っ!」
イザドラの手が勃起したドゥーベ氏の膨らみを弄ぶと、ドゥーベ氏は硬い身体を反らせて喘いだ。
「あなたのこれ、かわいくてしかたないんですの。わたくしのよりも大きくてぷくぷくなんですもの」
イザドラは自身のドレスの前をくつろげ、コルセットに押し上げられた乳房を露出させた。確かに彼女の小ぶりでまろやかな乳房の頂は、悦んではいたが控え目で、ドゥーベ氏のそれのように、狂い咲きしてはいなかった。
「いじりがいがありますわ」
丘のように膨らんだ乳輪を押しつぶされ、先端を引っ張られ、爪をこじ入れられる。
「んっ、んん、ふんんっ!」
ドゥーベ氏の腰がぎくぎくと跳ね、勝手にイザドラを擦り上げる。
「もう動かしてもいいんですの。うふふ、わかりました」
イザドラは圧し掛かるようにドゥーベ氏に覆いかぶさり、今日何度目かの律動を始めた。
「んんふ、ふぐ、ん、が……」
蜂蜜とそれ以上のイザドラの精液に塗れて蕩けきった淫乱な肉穴を、巨大なそれで味わうようにゆっくりと掻き回される。まるで脳味噌を直接掻き混ぜられているかのような快感に犯される。
ドゥーベ氏は溢れる涎を嚥下することもできず、ただ唇の端から垂涎するだけだ。視界は突かれる度に湧き上がってくる涙でぼやけてくる。
「ね、ね、もっと善くなりたいでしょう」
イザドラは後ろ手で執務机に転がっていた羽ペンを拾い、淫蕩な顔で微笑んだ。それは先にドゥーベ氏の尻に刻印を捺して苛んだそれだった。
わけもわからず、ただイザドラの与えてくる突き上げを感受していると、突然過ぎたる快感が背筋を支配した。
「んぐひ、ふぐうううっ!」
ぎしぎしと音を立てそうなほどに背が弓なりに反った。
「あら、やっぱりこれお好き」
ドゥーベ氏の敏感な乳首を羽で撫でながら、イザドラは嬉しそうに笑った。
その幽かなくすぐったさが腰にじんじんと溜まる快感に直結する。
「ふんう、ふ、ふうう……」
鼻にかかった声を上げながら、ドゥーベ氏は善がった。乳首と肉穴を同時に責められ、快感が許容量を超え始める。腰がじわりと熱くなり、一層どろどろに溶けてゆく。これが極まれば、身体の末端から有機状のスープになって溶け崩れて、消えてしまいそうだった。
羽で乳首をなぞられ、ペン先でつつかれ、慰めるように指で撫でられ、息を吹きかけられる。ドゥーベ氏もイザドラの丸い肩や鎖骨を撫で、胸をやわやわと愛撫した。
「あん、ああ、いいわ、んん……」
イザドラは目を細め、腰を早めた。中を激しく擦りあげられ、先に出された欲望がびゅくびゅくと溢れ出す。
イザドラの手が胸から下腹部までを一直線に撫で下ろし、ドゥーベ氏の下腹部の濃い陰毛に触れる。そして、何度も何度も絶頂し震えている中心のそれを優しく扱き出す。
「ああ、あなたを略奪する女を本にするのではなくて、あなたを本にして手元に置いてしまえばいいのね。そうすれば、いつでもあなたをこうして全身で感じられる」
「ふううっ、ふお、おおん……っ」
羽ペンで、手で、怒張で徹底的に支配されながら、ドゥーベ氏は呻いた。
垂らした唾液が法服に染み、神聖なそれを情欲に穢してゆく。
「んんお、ほふ、ふううう」
三つの刺激に急かされるように、ドゥーベ氏が鳴く。絶頂が近いのだ。
ドゥーベ氏の射精を促すような肉穴の動きにそれを感じ取ったイザドラは、より激しく、荒っぽく、上から槌を振りおろして杭を打ち込むように動く。
「すき、ブリュノさんっ。わたくしね、あのね、あなたのことがすきなのっ」
ぱん! ぱちゅっ! ぐちゅぷ! どちゅっ!
「ん、ん、んぐあ、んぐひいいい! ふぐおおおッ!」
イザドラの甘い言葉と打ちつけに、ドゥーベ氏は法服を喰いしばりながら絶頂に鳴いた。
ぶびゅ。
ドゥーベ氏の男根から、弱々しく薄い欲が散る。量と濃さにおいては大したものではなかったが、彼にとっては、それと快感の大きさは比例しないのだ。
「ブリュノさん、ブリュノさん、すきっ、あ、あぁんっ……!」
イザドラは仔猫の鳴くような声で悦びながら、ドゥーベ氏の中に好意を吐き出す。
ぼびゅっ、ぶびゅ、ぶちゅ。
「んごっ、んおおおッ!?」
そして射精しながらもドゥーベ氏の痙攣する内腿をしかと掴み、なおも中で力強く動かし、愛する者の肉穴全体を精液漬けにしながら擦り上げる。
ドゥーベ氏は噛んでいた法服を吐き出し、慟哭した。
「ひぃ、イザドラっ、ほおおっ、ほふっ、ふお、こほおお……っ!」
その執拗な擦り込みに、敏感なドゥーベ氏は無理矢理引きずられ、もう一度軽く気をやった。
ドゥーベ氏は最後に、黒い法服に白濁をまき散らし、身体を弛緩させた。
「んん、ああ、すごい、また達してしまいましたのね……」
イザドラはドゥーベ氏の腹に手をつき、やっと萎えた肉棒を引き抜いた。そしてだらしなく椅子にしなだれかかっている愛する夫に折り重なった。