忘れもしない。あれは三日月の夜。池の畔。
幼子のように無邪気に水と戯れる影。潜っては浮かぶ長い尾。一際大きな水音と快活な笑い声と共に伸び上がるしなやかな身体。妙齢の娘らしく柔らかな線を描く肢体。野暮ったい服から解放され、その滑らかな背で大きく広がる皮膜の翼。それは堂々たる竜の面影。
水妖の輪に入れないのは当たり前だ。彼女は人の手に余るが故に祀られ信仰され、そしてそんな経緯さえも長い時の流れに濯がれて忘れ去られた水竜だ。水妖と水竜、同じ“人ならざるもの”であれど、その身に宿る神性は多分に違う。
水妖は何かに望まれて現れた神だが、竜は人の世が始まる前からそこにあった。それは自然そのものだ。
スターバックスは、あの部屋が汚くて無作法で一日一日を適当に生きている半人半蛇は、この辺りの水を統べる神だったのだ。
しかしクシーダが一等驚嘆したのは太古の神の血脈が己の出自すら忘れて“ぞんざいなくらし”をしている事ではない。
腰の下から連綿と繋がる鱗の、人に例えるなら下腹の辺り、鱗の継ぎ目がぬらりと開いて、そこから聳える雄の証。目を疑って、よくないと思いつつも再び上半身を観察すれども、そこに据えられているのは華奢で豊かな女体でしかなかった。
肉柱の根本、継ぎ目の深き所には女の器があるのだろう。神とはそういうものだ。
すなわちスターバックスは半陰陽。
それだけならまだしも彼女の雄は尾と同様に二股に別れていた。半陰陽の半陰茎……思わず優雅さのかけらもない韻を踏んでしまうほどクシーダは驚愕していた。そして崇拝の念さえ芽生えていた。
「最低じゃん。リサーチとか目撃とか、それただの覗きだろ」
「故意ではありません。不幸な事故です」
「ひとの裸を事故扱いするな。しかも不幸て。でも見てんなら話は早いな」
服を脱ぎ捨て裸体になったスターバックスの背で大きく自由に広がる翼。猛々しさと優美さの混ざり合った奇妙な美しさにクシーダは息を飲む。
「おおらかな水妖どもにさえ、水のものとも陸のものとも空のものともつかなくて気味悪がられた体だ。池から出てけって言われるくらい」
「それなのに居座っているのですか。鋼の心臓の持ち主ですね」
「違うよ」スターバックスは顎の前に構えた拳を突き出しながらギャハハと笑う。「あっちを追い出したんだ」
最近広場の噴水に水妖達がたむろしていたのはこいつのせいか、とクシーダも自身の拳を強く握り込む。水妖は視界に入れたくない。目が合ったが最後魅了されるからではなく、裸同然で暮らしているからだ。人間によく似た肉体をしておきながら。
「貴女にしてやられるなんて、この近辺の水妖は随分弱かったのですね」
追い出したというのが本当なら、何故あの夜、ああまで人間相手に水をあけられたのか。
「人間はすぐおっ死ぬから手加減が難しいだけだよ」
気付けばクシーダは乱雑に寝台に投げ捨てられていた。迫る竜の影はちっぽけな人の身を悠々と覆う。神の威光に当てられたか、クシーダは身も心も縮み上がって、さながら蛇に睨まれたなんとやら。
「どっちにしろこっちが上になるけどさ、さて、入れるのはどっちにする。あんたか、それとも」
答える間もなく……というよりクシーダは答える気もなく顔を背けていたが、遠慮も配慮もなく一気に剥かれる下半身。まるで脱皮。
「おぉ? 選ぶまでもなかったか」
寄る歳波のせいで少々柔らかさを伴った男の腹の隆起はやがてなだらかに収束する。そこに雄の象徴、陽根はない。
スターバックスが両性具有なら、クシーダは逆性具有——つまり、雄の容姿でありながら性器は雌のものが備わっている。そのせいで色々とままならなかった事もある。もはや他人に己を晒し受容してもらおうなどという甘い考えは尽き果てたが、人ならざるものになら、あるいは、とここに心身を委ねるに至る。前後不覚の暴投とも言える。
「貴女に選択の自由と権利などありません」
顔を背けたまま、それでもクシーダは気丈に傲岸不遜な態度を崩さない。そうする以外の生き方を知らない。
「下敷きにされてんのにいつまで上から目線なんだよ」
鋭い竜の眼で肌身をじっと観察され、それだけでぞわぞわと羞恥と後悔が立ち上り、どうしてかそれが快感となる。腹の奥、女の器に蜜が染み出しているのがわかる。理性で抑えられるものでもない。クシーダは思わず両の脚をすり寄せ身悶える。薄く開いた唇から漏れる深く甘やかな嘆き。
「は……所詮はうろくず。ん、ふぅ……なんと不躾で、無礼な視線……ん」
「う、んん、や、しょうがないだろ、だって、なんていうか、あんた……」
スターバックスの瞳孔が彷徨い細い喉がごくりと鳴る。否定的な言葉は御免被りたかった。聞き飽きているし彼女にとやかく言われたらもう立ち直れない。おそらく心臓が張り裂けて死ぬ。
「陳腐な賛辞は過剰供給気味ですので遠慮しておきます」
傷つくのを避けるための口撃だったが、どうやら相手は額面通り受け取ったようだ。
「ああ、契約取るためによくこういうことするんだ。商売人ってすごいな。それともあんたが特別商売っ気が強いのか」
人ならざるものの言葉にはクシーダのそれとは違って皮肉や嫌味の色はない。ただ、誰彼構わず房中術を仕掛けていると思われては困る。
「このようにわたくしが直接出向いて特別奉仕に及ぶのは最終手段です」
しかしそんな回りくどい釈明が単純な相手に通じるわけもない。
「ふうん。んで、その特別ご奉仕品ってのはよく出るブツってわけだ。慣れてそうな感じだし。だってもうこんなに濡れてる」
蛇の尾がうねり、クシーダの股座をずるりと擦過する。膣口も陰核も混ぜるように鱗に撫でられ、腰がびくびくと跳ね回る。
「ッお゛!?」
それなりに手心ある触れられ方ではあったが、己の指以外知らぬ未踏の地を異形に荒らされては陥落するなと言う方が無体だ。骨の髄まで恐怖に慄くように震えて、胎が淫らに息衝く。声には揺れる吐息が混じり、視界は涙に歪む。
「あぁ、あっ、貴女のような人に……ッ、べたべた触られたくありませんので……うぐ、ぅ……しっかり準備をしてきたまで……です」
淫らな期待に肉体が逸り、昨夜からこんな有様だったとは口が裂けても言えない。うろくずの者に手酷く犯される己を想像し何度自涜に耽ろうとも虚な身は満たされなかった。ただ尚更に腑が滾るのみ。啜り泣きに混ぜてその名を呼び、疲労に意識が飛ぶまで火照る体を慰め続ける他にはなかった。
「あんたやっぱイカれてるよね。触られたくないのにそれ以上のことしようとしてさ。ほんとに大丈夫なの」
全然大丈夫ではない。もはや理性で抑えられる衝動ではない。淫らな灼熱が体を焦がし、女の器からは雄を招くための淫らな蜜が止め処なく溢れてきている。
「大丈夫、に、決まって……ですから、っは、はやく……してくださ……」
はあはあと、浅ましい吐息にとうとう声が途切れる。とろりと溢れる涙の雫。自ら脚を拓き腰を掲げる姿のなんと惨めで……快い事。
蛇女の蠱惑的な笑み。赤い唇をちろりと舐めるのは炎のような二股の舌。
「はいはい」
「はやくしなさいッ!」
「へい」
緩い返事の後の二つ返事。そしてぬらりと開く鱗の割れ目。そこから勃ち現れる二股の性器。人間のそれとは違って、白っぽく先細りした形状。そしてその表面にまばらに生える肉の突起。
クシーダは一瞬目を疑い、やはり見間違いではないと知るや半身を起こして腰を引き情けない悲鳴をあげる。
「なんですかそれは!」
「倍ちんこ」
「それは知っています! その棘」は言い過ぎかもしれなかったが、遠目で裸体を観察した時にはそんなものが逸物に生えている事に気づかなかった。そろそろ眼鏡のレンズの替え時かもしれない。いや考えるべきはそんな事ではなく。「何のためにそんなものがついているのです」
「しらん」
確かに馬鹿げた質問だったが、その適当な返答はないだろう。もう少し相手への敬意と気遣いを態度に示すべきだ。と、クシーダは身勝手にも自分にないものを相手に強く求めた。
「そんな凶悪で野蛮な物をわたくしに入れるつもりではないでしょうね!」人間の雄すら知らない清い身なのだ。視覚的にも触覚的にも刺激が強過ぎる。なのに目が離せない。悍ましい物ほど見たくなる。身に受けた時の狂乱が電撃的に脳裏を過る。
「いちいちピーヒャラうるっせえなあ」
肩を引っ掴まれ寝台に縫い止められ、膝に絡みつく鱗。太腿をこじ開けながら膝を胸まで持ち上げられ、無理矢理雄を迎え入れる体勢にさせられる。まるで足枷を噛まされた狩の獲物だ。
並の男より力強い尾。人間相手の喧嘩で手加減していたのは確かなようだ。これを振るえば大抵の生き物はひしゃげて、締めあげれば体中から水分を搾り出されてしまうだろう。
「右ちんこと左ちんこ、どっちから入れよっかなー」
晒された下腹にふてぶてしく二本の雄を乗せられて品定めするように前後にずるずる動かされる。濡れた柔らかな花芯を肉棘に土足で荒らされては堪らない。
「あッ、ああ……っ、おやめなさいっ、そんな下品な……」
クシーダの喉が恐怖の吐息に引き攣り、一方で膣の入り口は肉の被虐を求めて雄に吸い付く。自分でもどちらの感覚が本当なのか分からない。分かるのは恐怖と期待は共存し得るという事のみ。そして恐怖は淫らな期待を一層引き立てる。
「やれっつったのそっちだろうが! こっちはもうその気なんだよ!」
「やめ……っん゛ぉッ……!?」
硬い勃起が一息にクシーダを刺し貫き、彼の拒絶は濡れた嬌声に蕩ける。優美に仰反る身体が元からくしゃくしゃだったシーツに一層皺を寄せる。
初物に受けて良い暴虐ではなかった。
クシーダが想定したように、いや、それ以上に、肉棘は通り過ぎるだけで敏感な粘膜を刮げ落とさんばかりに苛め抜いてくる。そして先細りした形のおかげで、怒張は易々とその先端をクシーダの奥津城にめりこませていた。混迷を極める官能が蜜壺を引き絞り否応なく陰茎を悦ばせる。刺激が神経を焼く。これが快感で絶頂なのだとしたら、これ以上こんな行為を続けては自分というものが無くなる。それが苦痛なのかというと、まったくそうではないのが恐ろしい。
「すっご、やっばぁ、なんだこのエロ穴。あっつくて、狭くって、どんだけちんこ大歓迎してんだ。いつもお高くとまりやがってるくせに、セックス大好きかよ」
「え、お゛……ッ、ちが、あ゛ぁあ、ひっ、ィ゛」
下劣な言葉を吐かれてもそれに応酬すらできない。喉から潰れた喘ぎ声が漏れるだけだ。まだ動いてさえいないのに、最初の刺激だけでここまで身体が思う通りにならなくなるとは。
「違くないだろ。入れた途端声も顔も三百倍エロくなってセックス用の態度になりやがって」
“そういう”目で見てもらうつもりではあったが、実際そう見られていると分かると羞恥心が胸を刺す。元々早鐘を打っていた胸の鼓動がいやましに高まり、これ以上はもう生命の危機だ。いくらなんでもそんな心拍数を打ち出して無事で済む年齢ではない。
「は、ぁ……っ? は……っ、ああ、そんな、ことは……」
「あるんだよなあ」
意地の悪さに彩られ艶に輝くスターバックスの顔に見惚れている暇はなかった。容赦なく腰を抜かれ、再び強く突き下ろされる。肌と鱗が触れ合う音は打擲音というには生優しい。硬い鱗に膣口も陰核も一緒くたに打ち据えられて野卑で暴力的な快感が脳天をかき回す。
「お゛ォ゛〜ッ」
溺れた悲鳴。かき回され潰れた脳髄が流れて鼻腔や気管を侵しているかのような。
喘ぎ声を出す事のみに執心する喉は呼吸も嚥下も忘れ、そのせいで呆けたように開け放たれた唇の端からは涎が一筋流れ落ち、酸欠に霞んだ瞳は瞼の陰に逃げかかる。欲猛る者にとってはひどく心地よさそうな顔に見えるだろう。実際そうだ。
「はいはい気持ちいいね。トゲちんこでおっさんの女の子粘膜いっぱいごしごししましょうねえ」
肉の棘に粘膜を梳られ、蜜壺の入口を容赦なく抉られ、官能が乱れる。絶頂に打ち上げられたばかりの不慣れな場所をこう乱雑に荒らされては堪らない。一突きどころか瞬間瞬間に激しく意識が蒸発する。
「お゛っ、あ゛ぁあ゛ッ、動か、ない……っで、くだ……ぁ、動くな゛ぁああ゛ーッ」
「無理」
後に残るのは女の荒い息遣いと男の堕ちきった喘ぎ声だけ。
「ん゛ッ、ォッ、おほッ、お゛ぉおお〜ッ、い゛ゃ゛ッ、あ゛ッ」
クシーダの耳を犯すのは野太く下品な鳴き声だ。自分の声だとは認めたくなかった。
肩に食い込む女の細い指の感触だけがうつつで、後は茫とした夢のようだ。
「あー、出る、一発目!」
いいだけ梳られ充血した粘膜を入り得る最も奥まで荒らされて、蜜壺の入口を抉るように貫かれる。きゅうと性器全体が収縮して絶頂が目前に迫る。狭苦しくなった肉壁が肉棘の一本一本に吸い付き、種汁を一滴も逃すまいとしている。
とうとう蜜壺と蜜道に密着した肉棘が破裂する。そうとしか表現できない。すべての肉棘から制圧の証が鋭く長く吹きかけられる。柔で初々しい粘膜は怯え切って、無為に塗り潰されるしかない。濃密な雄の匂いが室に満ちる。骨身に染みて脳髄に纏わりつく。
こんな凶悪な射精があっていいものか。そしてそれを人の身に受けてもいいのか。欲も思考も情も、すべて吹き飛ぶ。あまりにも容赦ない絶頂だった。
「ッ、ひ、ぃ……ッッ」
悲鳴が凝って体の中を嵐のように駆け巡る。身体が散りそうな程の激甚な快感。それが肉体の隅々まで行き渡る。四肢が末端までぴんと伸びる。しかし内臓は自身を手荒に制圧した雄に媚びるように柔らかくうねって浴びせられた欲汁を飲み干していた。
「ああ、すごい痙攣。壊れたんじゃないかと思うくらい」たまんないね、とスターバックスは満足げに笑む。
中を満たしていた肉槍がずるりと引き抜かれる。未だ尾を引く絶頂に鋭敏になっている肢体はそれだけで再び過ぎたる悦楽の果てに押し上げられる。意識の埒外で腰は未練がましく相手の性器を追って持ち上がってしまう。
「ほお゛っ……ぅ」
互いの性器の間で糸を引いていた粘質の精液が途切れて肌を垂れてゆく感触は暴虐の終焉を意味しているはずだ。クシーダはそう決めつけて身勝手に安堵する。
「はぁ……っ、ん、ふぅ……これで、満足……」
「さてと、二本目いくか」
しかし現実と目の前の生き物は非情だ。未だいきり勃つ半陰茎の片割れを突きつけられ、クシーダは怖気立つ。
「な゛……あッ、い゛ッ、て、る゛……ッ、からぁ゛……っ、待って、今だめ……ッ」
「好きにしていいって言った自分を恨めよ」
法悦に浮き上がっていた腰が寝台に激突する。
「ォ゛ぉッ——!?」
軋む。クシーダの肉も、骨も、臓腑も、神経も、精神も。
絶頂に更なる絶頂を重ねられ、意識が泥濘む。冷たい印象を与える瞳は濡れ蕩け、いつも皮肉な笑みに凍りついている頬は涙に溶かされる。
「かは……っ、はぁッ、あぁ〜……」
傲岸不遜な言葉の代わりに唇から漏れるのは掠れた喘ぎ声。
「おお、お綺麗なツラが残念な感じになってるなあ。気持ちいいことしか考えてなさそうな感じ」
クシーダの腰を石の寝台に縫いとめたままスターバックスは揶揄する。重たい蛇体の下、死にかけの蟲のように痙攣する腰。
「ふうぅ……っ、馬鹿な事をっ、他の事だって考えて」いない。まったく。
逃げ場のないまま乱暴狼藉を働かれ、ものにされる想像しかできない。そしてそれを心の底から求めている。だが望み通りになれば取り返しがつかないだろう。一度抱かれれば少しは己の気が晴れると、空虚が満たされるとばかり思っていた。見通しが甘すぎた。
「ぁ……謝りますっ、これまでっ、の……おぉ゛、態度、本当に申し訳ぇッ、ふ……ぅ、ありま、せ……ですから、許し……て」肉の凶行によって削られた矜持のなけなしの最後の一片さえもかなぐり捨てての哀願。
「許す許さないの話じゃあないんだよなあ。あんた酒と引き換えに自分の一日を売っ払ったんだ」
まるで悪魔との契約である。背徳的で甘美な。魂を求めているのはクシーダの方だが。
「あ、あぁ、これいじょ、されたらぁ……っ、癖になって……」より無様に直裁に乞うようになるだろう。淫らな肉の交歓を。「週に一度では済まなくなる!」
「ほいじゃ毎日やろうか」耳元で割れた舌がさざめく。どちらも魅力的だ。提案も、舌も。飛びつきたくなる。
「そ、そう……っ、あぁああ、ちがうぅ、したくないッ、したくないからぁああ、こんなのっ、自分じゃないいいぃ……ッ!」
甘ったるい声で半人半蛇に媚びるなど。いや、荒ぶる神が相手と思えば妥当な振る舞いかもしれない。肉欲に堕ちかけたクシーダの思考は都合のいい方へと傾く。
「週に一日くらい、自分じゃなくてもいいだろ」スターバックスは自分自身に言い聞かせるようにそう言うと、クシーダの顔の横に手をつき目を覗き込む。「いいと思う。誰も見てないよ」そしてクシーダの答えも待たずに腰を打ちつけ始める。
「ォ゛ッ、そ、んなッ、ん……ふぅうッ、い゛っ、ふ……っ、ん゛〜」
クシーダは勝手に漏れ出すらしくない媚声を両の手で封じる。
「そんなことしなくてもいい。誰も聞いてないよ」好きにすりゃあいいんだ、城壁の中じゃあないんだから、とスターバックスが言う。なんと魅力的な甘言だろう。
唆されたクシーダの手がはらりと解けて落ちる。もはやどうにでもなれと、すべて投げ出し転がり落ちる。
「あ゛ッ、は、ん゛ん゛ッ、お゛っ、おほッ」
声を上げれば上げるほどに、いやましに身体に快楽が馴染んでくる。
「いいよ、いいね。腰にくる、そのきったないエロ声」