硬い鱗で打ち据えられる淫芽と花弁。肉茎で快感の澱を混ぜ返されてどんどん流し込まれる新たな肉悦。淫楽の棘によって柔肉に擦り込まれる先の欲液。繊細な襞の一枚一枚を撫で、捲り、逆撫で、余すところなく暴かれる。
そしてクシーダの隧道は締め付けと蠢動によって与えられた以上の官能を相手に返報する。
「うわ、さっきより……すごい」
単純で純粋な感嘆。それがクシーダの心臓を握り潰さんばかりに掴む。瞳孔が開くのは死にかけているからでも、大きな翼の影に埋もれているからでもない。
スターバックスは胸の奥から深い息を吐く。
「こんなくっそエロい勧誘されて断った奴っていんの?」
クシーダは必死に首を横に振る。契約が成らなかった事はない、という意味ではなく、肉体で勧誘した経験などないと言いたかったのだが。
「いるわけないよな〜。あたし用に体空いてる日あんの?」
「は……っ、あり、ます……っ。わたくしの、スケジュール管理能力をぉっ、甘く見ないでください……ッ」
「そういう偉そうな態度も顔もさ、商品だっていうなら買い占めるよ」いくら、と問う顔は真剣だ。
「ちが……う、売り物では……」
「販促非売品?」
「血の巡りの悪い愚図……ッ、こんな事……貴女以外に……すき、好きなんです……っ」
「はあ、そんなにセックス大好きかあ」
「んっ、馬鹿っ、ちがっ、お゛ッ、おぉ〜ッ、ぉほッ、ん゛ォ」
押し寄せては返す淫悦。貫かれれば身が引き締まり、抜かれれば甘く蕩ける。
臓腑を掘り返されるという体験した事のない奇妙な感触は、今やなくてはならない官能となってしまっていた。他にこんなに奇妙で不気味で悍ましい刺激は知らない。
身体が裏返るような快感。愉悦のみを受け取るどす黒い内臓が露出して、見目の良い皮膚はその中に飲み込まれてゆくような。
互いの欲の体液でしとどに濡れた花芯を鱗が叩きのめす湿った音が石室にこだまする。熱く濡れた吐息が室を温め、死霊の囁きのような嬌声が地を這う。
「お、出るよ、二発目」
終わりの兆しに、埋められた陰茎がぶくりと膨張し、そして破裂する。隅々まで余す所なく白濁に彩られる臓腑。
「ん゛……ッ、い゛ぃ゛ッ、あ゛ぁ゛あ゛〜ッ!」
力なく寝台の横に垂れた腕。まぐわいの衝撃に揺さぶられ、寝台の側面をなぞる指に触れるのは螺旋状に絡まり合う二本の鱗の意匠。
やっと気付く。自分が横たわるのは寝台などではなく、古の供物台だと。
肉の供物は己が腰を捧げ上げ、忘れ去られた神を抱擁し、邪な法悦に身を委ねた。
歪んだ窓から差し込む高い日差しが供物台の上で絡まり合い一つになった肉塊を照らす。
硬く編み合わさった二十の指と二対の脚。汗の滴る首筋に埋められる白い顔。隙間なく密着する胸。全身を使った深い抱擁は容易に解けはしないだろう。糾われた縄のように交歓する姿はさながら神事だ。
供物として堕落しきったクシーダは何も考えてはいなかった。ただ本能のままに欲を満たす事だけ。ゆるゆると腰を動かして陰唇を二つの陽根に擦り付けて再びの時を待つ。肉棘が蜜道の門とその上で項垂れる淫核を間断なく責め苛む。いや、望んでそうさせているのは彼自身だ。早く神の情けを受けたかった。一日は短い。こと、愉しい時は早く過ぎる。
逸って燻る供物を慰め鎮めるのは水竜の滑らかな肌。渇いた喉に口移しで流し込まれるスピリタス。刹那の渇きは癒えるが、頭を殴りつけるような酩酊が訪れる。飲みきれず溢れた酒を蛇の舌がちろりと舐めて、流れを遡り濡れた供物の唇を味わう。
「口開けな」
クシーダが命じられるがままにすれば、良い子だ、と囁く蛇の舌が彼の口腔内を這う。ちろちろと上顎をくすぐり、ぬるりじとりと舌を絞る。彼女の舌それ自体が酒精のように粘膜を痺れさせ、男の思考をより不明瞭に塗り潰す。
二度の射精を経た余裕から生まれる執拗な愛撫。それを受けてクシーダの心身も随分綻び隷属の栄誉に浸っていた。
「へ……ッ、へは、あ……♡ はぁっ……♡ ん……ぅ♡」クシーダの口からひどく甘えた声が出る。
「すごい気持ちよさそうな声出すじゃん。いつものスカした冷たい声はどした。あ、今日は自分じゃないのか」
「そう、です。いつものわたくしはぁ……っ、こんな下品な声で、蛇とのまぐわいをっ、悦んだりしません……ッ♡♡」
ともすれば冷酷な印象を与える顔は今や淫蕩の熱狂にぐずぐすに煮崩れて、浮かぶ笑みから嫌味は揮発して残るのは芳醇な艶やかさのみ。蛇よりも蛇らしくうねり蠢く肉体は匂い立つような色香を放つ。
「ですからっ、早く……ぅ♡」
熟れて焦れたクシーダの体が蛇のようにうねる。痴態に煽られさらに強く絡まってくるかと思っていた蛇体は、何故かするりと解けて無情にもクシーダから離れる。意図はすぐに分かった。
「早く、なに」目を細めて笑むその顔は弱った獲物を甚振る捕食者のそれ。
「血の巡りの悪い冷血動物ぅ……ッ!」そう吐き捨てる声もやはり甘く媚びた色を含んでいる。罵倒は上っ面だけだ。そしてその罵倒もすぐに萎れる。「はぁっ♡ んぁああ♡ お願、しま……す、入れて……くださ……い」
恥じらいなど、とうにかなぐり捨てた。自ら脚を大きく開き、腰を天に掲げ、自由になった指で淫裂を寛げる。吐き捨てられた雄汁と淫蜜の混ざり合った結合の証が尻の谷間を伝ってシーツに溜まる。
「何を」
強く押し当てられ擦り付けられる陰茎。分かっていないわけがない。もっと無様に強請ってみろというわけだ。
「ぉ゛うぅ……っ!♡ 分かっている、癖に゛……! 貴女の……っ、ふぅーッ♡ ぁ、ああッ♡」理性を振り払うよう頭を激しく振る。「欲しいっ♡♡ ペニスっ♡」直接的な語句を発した途端脳がじんと痺れてすべての箍が弾け飛ぶ。「蛇ペニスっ♡♡ んッ、だから、早くッ、わたくしの、ここに♡」
はっ、はっ、と獣のように浅ましい息を吐きながら迎え腰をかくかくと振る。間髪入れず二度も使われ急速に熟れさせられた遅咲きの花芯は欲露に濡れて艶然と花開いて雄を待ちわびている。
「ここってどこ」
淫辱もここに極まれり。しかしもはや淫猥な言葉を吐く事に心理的な抵抗はなかった。とにもかくにも早く乱雑に花を散らして欲しかった。先程そうしたように。
「交尾大好き中年雄まんこにっ♡♡」自身を劣情にまみれた猥語で表現する事の心地よさといったら。胸がすいて激烈な悦びが去来する。「貴女のっ、立派な雄々しいトゲおちんぽッ♡ わたくしの奥まで突き刺して、乱暴に掻き混ぜて、気の済むまで蛇汁射精ッッ♡♡ して欲しいのです♡♡ お願いっ、お願いします……ぅっ♡♡♡」
「はいはい」
「返事はっ♡ 一回ぃっ♡♡♡」
「二回でいんだよ」二本つっこむんだから、という言葉に疑問を挟む暇などなく「オ゛、ごッッ!?」憐れな供物の思考が消し飛ぶ。
供物台に押し付けられ、絡みとられた肉体はきりきりと仰け反る。射られる寸前の一番張り詰めた状態の弓のように。
「かひゅッ、ぉ゛、お゛〜……!?」
快楽の爆心地は愉悦の汁を盛大に撒き散らす。これまでの果てと快感など一瞬で塗り潰された。
「おお、潮まで吹いて、すごいイってる」
遅れてやっと、絶頂であると気付く。嵐のように容赦なく、暴力的で、一瞬で淫悦の極地へ至らしめる絶頂。充足感も過ぎれば暴虐である。
「あ゛……かはッ……ォ゛ッ」
陸に打ち上げられた魚のように喘ぎ、抜けた腰が痙攣する。
「うっわ、見なよ、二本とも根元まで入りそう。さすが特別ご奉仕しまくってるだけある」
「はっ……?」ぼやけた視線の隅に映るのは、いいように広げられた柔らかな泥濘に突き刺さる二つの肉矛。まだすべて収まりきってはいないが、それでも刺激は十分。「あ゛ぁ゛ッ、なんて、事を……ッッン゛——!」
視覚的な刺激で再び頂に達する。提供したての品をこうまでぞんざいに扱われ、しかし湧き出てくるのは嫌悪ではなく被虐の愉悦だ。胸に一滴落とされた後ろ暗い悦びがじわりと広がってゆく。
「なんてこともないだろ。お言葉に甘えて、交尾大好き雌おっさんまんこで同時抜きさせてもらうから」
体重をかけて腰を進められ、乱暴に掘削されながら広げられてゆく蜜道。太い肉楔の圧によって溢れてくるのはクシーダの愛液ばかりではない。先程吐き出された二本分の精液もまた膣内より追い出されてクシーダの腹の谷間を伝い、臍に溜まる。
「あ゛ーッ! やめ゛、っ、あぅ、ぁあ゛あ゛ぁあーッ!」
「ほらっ、がんばれがんばれ。子宮差し出せっ」
より奥深くを探る肉の禁忌が身を蝕む。蜜壺が甘く疼き自ずと雄を求める。被虐の快楽に精神を完全に染められ呑み込まれていた。
「お゛〜ッ♡ 呑み込まれ゛ッ、る゛……っ♡♡」
「呑み込んでんのそっちじゃん」
肉杭が奥を目指す動きと肉襞が受容する動きが相俟って、緩慢であるが確実に二本の楔が腹底へと打ち込まれてゆく。長大な異物を少々の懊悩と共に柔軟に受け入れてゆく下腹は雄の形に膨満し、供物に適した素材に順当に作り替えられてゆくかのようだ。
「あ゛ぁ゛ー……♡ わ゛たくしの゛ぉッ、お゛ぅ……ッ、お腹、こんな……♡♡ オ゛、ッお゛ぉ、二倍おちんぽでッ♡♡♡ はぉ、っん、卑猥な、いやらしい、かたち、に……♡♡♡」クシーダは啜り泣く。「はー〜ッ♡ っ……ふ、んん……お腹に交尾癖♡ 練り込まれてッ、体まで、わたくしではっ、なくなって……」嫌悪ではなく開放感に。元の己が呑み込まれ、溶解され、霧散する。後に残るのは水竜が肉欲に耽溺するのに適した放埒な肉塊。
とうとう奥津城に突きつけられる二本の矛先。肉の先端がぷくりと充血した蜜口を軽く刺突して威嚇する。
「さっきよりぬとぬとして、腫れぼったくて、なんかエロ」
普通ならば痛みさえ覚えるはずのその場所が、性の昂揚と被虐の悦びで、こなれた甘い快感を腹奥に染み込ませる。
白い指がクシーダの喉から体の正中線をなぞり下ろして、臍の下で止まる。
「ここ、わかる? あんたの気持ちいいとこだよ」
外側から子宮口を指先でとんとんと軽く打たれる毎にクシーダの腰と吐息が艶かしく跳ねる。
「あッ♡ あッ♡ はあぁあっ♡♡ い゛ッ……はへぇ♡♡ そこぉっ♡ もう、おちんぽくっついてるからぁ……っ♡♡ だから、もう……」
「もう動かしてもいいね」
「ひ……っ♡ だめっ、あぁっ……!」
法伝な態度とは裏腹に、スターバックスの動きは微かなものだった。小刻みに動かされる切先が城門と密着すれば、そこに愛液と精液の混然とした粘液が塗りつけられる。そして離れれば惜しむように糸を引く。まるで恋人同士がするような深い接吻だった。腑から響いてくる湿った卑猥な音がそのすべてを仔細漏らさず伝えてくる。
しっかり絆された後は腰を回し臓腑を探られ、子宮口に切先を密着させたまま揺さぶられ、酔った脳髄が弾けそうになる。ぐずぐずに煮え崩れた脳を支配するのはスターバックス、ただそれだけだ。
「おお、えらい。甘えて子宮口開いてきたな。つかしゃぶりついてんじゃん。ちんこ大好きかよ」へへへ、と嫌らしく嗤う淫虐の徒。「言ってみなよ、ちんこ大好きですって」
「はっ♡ はふぅっ♡ はぁーッ……♡♡ すきっ、すたぁ……んぅっ♡ たくましいとげとげダブルおちんぽ♡ 奥とんとんっ♡♡ こねこねっ♡♡ されるとぉ、頭、真っ白、なって、きもちい……♡♡♡ すきっ♡ すたぁ、すたあ……のっ、ちんこ、だいすき……ぃ♡♡」
供物台に沈む身体。表情に力はなく、眼差しは蕩けて邪教の神に注がれる。
「やっば、たまらん。いつもつんけんしてる商会長殿がトロ顔のメス声でちんこ大好き宣言」
感慨深そうに目を細め、ふうと大きく嘆息するスターバックス。
「ごめん、二回出したからまったりじっくり味わいセックスできるかと思ったけど無理」
再びクシーダの脚にまといつき、標本のように固定するスターバックスの尾。両手は迎えるように上向きに立てられた彼の腰を強く掴む。
「んっ♡ あ♡ 獣ぉぉッ!♡ 貴女の方こそ、夢中で何度もわたくしの体を貪って、好きものの、くせに……」
「おぉ、煽りくさりやがって。覚悟しろや、欲しがりまんこガン突きして子宮に倍ちんこ突っ込んで直接蛇汁みっちり詰め込んでやるからなあーっ!」
突き下ろしがいやましに激しく荒々しくなる。所有を主張する杭打ちのように。
「あっ、あ、あぁーーっ♡」クシーダは滂沱しながら首を激しく横に振る。「わたくしのっ、ずっと大事に守ってきたぁ♡ 新品未使用子宮ッ♡♡ 雑に使い潰すのはっ、やめなさいぃッ……♡♡ ッ♡」
「やめてほしそうな声と顔じゃないんだよなあ」
「もっと節度をもって使えと言っているのですっ!♡♡」
「使うのはいいんかい」
執拗な、そして雄々しい鱗の打擲がクシーダを襲い、胎の入り口を突く刺激は脳をも揺らす。まるで原始的な生き物のように脳髄と子宮が直接繋がってしまったのではないか……クシーダは恐怖し、諦観と肉悦に浸る。
「よしっ、入る……!」
その喜悦に満ちた言葉が終わるか終わらないかのうちに、腹奥にずしり、みちり、と音がしそうな程の甘い鈍痛。灼けついたような子宮口を二本の太竿に押し広げられ、棘が入り口を梳りながら子袋の最奥を目指す。身を蝕むのは悪寒か、法悦か。
「ん゛ッ、オ゛……? ——ッ!?」
行き場なく暴れる腕は女の華奢な背に縋りつき、白い肌に鮮やかな爪痕を描く。
細かく腰を前後に動かされながら半陰茎の先端で底を突かれ、膣と子宮口を雄々しい竿と肉棘で一息に支配される。
「かはっ……! ぉ゛、はひっ、苦し……い……」串刺しにされ、息が詰まるがそれも刹那の事。「んあ……あ〜♡ 入って……、初めてなのに、こんな」爛れた快感を悦んでしまうなど。
「ああ〜? 初めてがなんだってんだよさっきからうるせえな。煽った自分を恨めや。こっちはこんなことするつもりなかったんだからな!」
翼が切れ味の良い斧のように振り回されて、原始生物的な威嚇の意を成す。その勢いに乗じて乱暴に出し入れされる肉柱。棘が狭い子宮口にはまり込み、抜け出る際には臓器ごと引き摺り、挿入の際には押し上げる。陰茎が関を通り抜ける度に果実を踏み躙るかのような陰気な音が胎奥から響く。
「お゛ぉお゛〜〜ッ!?♡♡」
動いて良いはずもない臓器が揺らいで、挿入を想定されてもいない異形の生殖器に犯されている。被虐の悦びはもう少しですべて出揃う。
「こんなのっ、セックスじゃないぃっ」
「じゃあなんだってんだよっ」
「交尾……ッ♡♡ 野蛮交尾ぃ♡♡ おっほぉ゛ぉッ♡ ぎもぢいッ♡♡ 交尾しゅきっ♡♡♡ 交尾以外考えられなくなるッ〜♡♡」
「じゃ考えるな。おらっ、蛇の超超超長持ち精子くらえっっ」
脈動し、子宮の底に激突する熱い欲望。初物の粘膜を焼き蕩かせて、絶頂に慄く胎が一瞬で濁流に呑まれる。淫らな形にぶくりと膨満する下腹。
「ぉ゛ン゛ッ……へはッ、あ゛、これッッ♡ きたっ♡♡ は、ぁぁあっ♡ 濃いぃっッ♡♡♡♡ 子宮と卵子溺れるッ♡♡ い゛ぐッ、あっ、あ゛〜——♡♡♡♡♡」
病に侵された時のような悪寒と戦慄。最後の被虐の悦びが身に降りかかり、快感が寄り集まって絶頂に至る。
鱗のそれよりも強く、執拗な抱擁が埒の凄まじさを物語る。脳髄が火花を散らして焼き切れ、目の前が長く白む。その血管に、その神経に、隅から隅まで流れ込む充足感。