「くほッ、おんッ!」
女のような濡れた甲高い声がドゥーべ氏の唇から飛び出る。確固とした芯を通され、腰が邪淫に痺れる。
「あん、ブリュノさんの中べとべとで、きもちいい」
ねっとりねっとりと煽るように執拗に腰を上下させながら、イザドラは感嘆の吐息を漏らす。こんな行為の最中だというのに、その微かな声も表情も愛らしい。それがまたドゥーベ氏を苛み、尻の動きを促してしまう。
「あのね、ブリュノさんのここ、わたくしのおちんちんをくちゅくちゅって舐めまわして、放してくれませんのよ」
硬い背を極限まで丸めて浮かせたドゥーベ氏の巨尻に小さな手を付いて、イザドラは腰をとすとすと落としてくる。体重はさほどではないはずなのに、その衝撃は鎚で打たれているかのようだ。
肉棒が動けばその立派な笠が襞に絡みついた白濁をこそげ落とし、尻の外へ次々と追い出してしまう。
尻から垂れた精液が背を伝い寝椅子を汚す。
「どう、わたくしのおちんちん、ご自分のお汁よりいい?」
肯定しようにも、尻を打つ衝撃に言葉は喉の奥に落ちてしまう。ドゥーべ氏は首を縦に振って意思を示すしかない。
「あうっ、うお、んん……」
「ならもっとたくさんあげる」
イザドラの腰が鞭のようにしなり、ドゥーべ氏の尻を素早く激しく打擲する。
「おお、くおっ、イザドラ、ああ、激し、すぎるっ」
硬い腰が軋み、悲鳴が押し出される。
責めは単調に激しいだけにとどまらない。イザドラは乾いた音を立てて触れ合った腰に体重を載せ、ドゥーべ氏の尻を押し潰す。それによって彼女の反り返った肉棒が肉襞を掻き分けいやましに奥へと沈み込み、淫靡な先端がか弱く震える肉粘膜の窄まりをこね回し嬲る。
「かふっ、うんんッ!?」
慣れぬ場所を突かれ、ドゥーべ氏は目を白黒とさせる。イザドラの膨らみがそこに接吻する度に肉壺が悲鳴を上げんばかりに引き攣り、その動きが快感を巻き起こす。
「んひっ、駄目だっ、そこは、ああ! んほ、おっ、んおぉっ!」
「あなたのおしりの反応を見ればわかりますわ。よすぎてだめなのでしょ」と、イザドラ。腰を積極的に動かし、雄の窄まりを堪能している様子だ。
そこは突かれると拒むように固く閉じ、しかし怒張が離れようとするとそれに吸い付いてついていこうとする。なんといやらしい肉の壺であろうか。だが自分を破廉恥と糾弾するわけには行かず、ドゥーべ氏は屈辱にも似たる快感に眉根を寄せ、瞑目する。
「この先にも入れられちゃいそう。ねえ、ブリュノさん」
くぽくぽと窄まりをつつきながらイザドラは言葉でも責め立てる。
「ご存じ? この先はね、おんなのこの一番大事な場所なの。そこにわたくしのを入れちゃうのよ。でもいいわよね、夫婦なのだもの、大事な場所をもらっても」
「そ、そんな、いくらなんでもそんな奥に……」
「でもそうしないとおしりきれいにならないのよ」
どうなさるの? とイザドラは狙いを窄まりの奥へと定めたまま腰の動きをぴたりと止めた。突然律動が止まり、その激しい出し入れに順応していた肉襞が物足りなさに痙攣する。
「それ以上はやめてくれ……っ」
だが言葉とは裏腹に精神と肉体はイザドラを求め、腰が緩慢に動き出す。震える肉壺を自分で凌辱させる事のなんとも言えない後ろめたさと心地よさといったら。
「お腰を動かしながらそんな事おっしゃっても説得力ないのよ」
それは分かるが止められないのだ。常日頃イザドラに許容を超えて淫らな事をされてきたせいで、ドゥーべ氏の身体は実に堪え性がなくなっていた。
「ああっ、あ゛ー……だが、イザドラ……はあ、止まらん、のだ、君が煽る……から」
ドゥーべ氏は閉じていた目を開け、恐る恐るイザドラの反応を伺った。こんな恥知らずな夫を蔑んでいるのではないかと危惧して。
だがイザドラはドゥーベ氏が思っていたよりもずっと穏やかな表情で、というより微笑を浮かべていた。
「うふ、さっきもこんな風に身体を持て余して自分で欲望を慰めていらっしゃったのね。わたくしの事を考えながら」
相手の声も言葉も実に柔らかく、ドゥーベ氏は胸を撫で下ろした。それに甘んじて性懲りもなく上辺の謝罪を零し「そうなんだ、だからあんな事をしたこと、許してくれ。仕方ないんだ、仕方ない……」腰の動きを止めようともしない。
しかし一瞬にしてイザドラの穏やかな表情と声色に陰惨な影が差す。
「そして今もこうして勝手にわたくしを使って発散なさろうとしてる!」
ぱしいん!
「くふっ!?」
ドゥーベ氏のでっぷりとした毛深い臀部がぶるぶると震える。腰の動きは落雷に感電したかのように痙攣し、止まる。
「あ……ああ、イザドラ……」
その瞬間を見たわけではないが、ドゥーベ氏は自分の身にどんな災難がふりかかったか想像がついていた。
イザドラはドゥーベ氏の尻に見舞った平手を掲げ、にっこりと笑った。それはえも言われぬ凄絶な笑みだった。
「お淫らで勝手なひと!」
そしてもう一撃。
「はひ……んっ」
ドゥーベ氏の目から涙が溢れる。
「女同士のお淫らを妄想するわるいこ!」
イザドラの手が優美にしなる。
ぱしいっ!
「ふおお! ほおお、ん」
尻を叩かれる事で肉棒を深々と銜え込んだままの肉壺が震え、感じてしまう。
「わたくしだって好きで出かけているわけじゃありませんのに!」
言葉を区切るごとにイザドラの平手が尻に襲い掛かる。
「それを種にいやらしい事考えて!」
「おおおっ、んおォォ!」
硬く不動の楔を支えに肉壺が壊れたように痙攣する。
「奥様方と出かけるのはあなたの顔を立てるためですのに!」
ぴしい!
「なのにあなたときたら頭痛と言って出がけの憂鬱なわたくしを心配させたあげく……」イザドラの手が上昇気流で舞い上がる猛禽のように天にひらめく。「わたくしが寝取られる所を想像して!」
ぱあんっ!
イザドラの嗜虐心は今まさに頂点に達してしているのだろう。責めは勢いづいて止まらない。
「そうなればいいと本当に思ってらっしゃるの?」
ばちっ!
握ればいつも柔らかく安心感をもたらしてくれる手は、今や怠けた荷運びの驢馬を打つ鞭のように無慈悲で猛々しい。
「んひいい、ち、ちが、思ってないぃッ」
首が引きちぎれんばかりに激しく頭を振りながらドゥーベ氏は否定する。だがそんな表面ばかりのものをイザドラが寛恕の裁量に加味してくれるわけがない。言葉尻を捕らえられて責め苦の促進剤として使われるのが関の山だ。
「なのに妄想はするなんて、あなたやっぱりおかしいわ!」
叩かれた衝撃で尻が踊り上がり、埋め込まれた肉棒に容赦なく奥を突かれる。
「ひぐっ……あ゛ー……」
ドゥーベ氏の腰が笑うように痙攣し、がっしりとした肉体が張りつめる。身体の表面に珠のような汗が浮かび、筋肉の谷間に向かって流れ落ちる。汗と精の臭いが混じり合い、身体の燃えるような熱を借りて周囲に揮発する。
「いやらしい身体! お淫らな匂い! 破廉恥なひと!」
イザドラの手がまたドゥーベ氏の身体を打つ。しかしその暴虐が降りかかったのは桃色に染まった尻ではなく……。
「おォ……ッ!?」
萎えきって使い物にならない肉棒が衝撃に震える。
ドゥーベ氏の食いしばった歯が剥き出され、横に裂けて強張った唇の端から唾液が垂れ落ちる。
軽くではあるが急所を叩かれた事に快感が漲る。それは腰骨を伝導して暴れ回り、萎えた肉棒から溢れ出た。引き攣る腹筋が生暖かい愉悦の髄で撃ち抜かれる。確かに勢いと量はなかなかのものであったが、濃さに欠けるそれはまるで……。
「いやあね、お漏らし?」
言葉は非難めいていたが、イザドラは実に嬉しそうな顔をしていた。ドゥーベ氏を責める種が見つかった事がそれほどまでに喜ばしい事だったのだろう。酷い女である。
「ちがう、これは……」
歴とした男の精であるというのに。ドゥーベ氏は必死に頭を横に振る。
「ううんおしっこよ。だってあなたのは勃起していなかったし、出てきたお汁も白くないもの」
肉の隆起の高低差によってさらさらと流れ落ちる半透明の液体がイザドラによってドゥーべ氏の腹や胸に塗り込まれる。精は濃い体毛の表面をてらてらと薄暗く卑猥に輝かせ、見るものに畏怖を植え付ける野獣のような巨躯を実にいやらしい色に塗り替え堕落させていた。
「違うっ、これは精液……だ」
ドゥーベ氏は自らの沽券のためにそう否定したが、しかしこの返答はさらに彼を窮地に追い込んだ。つまり間違った回答をしたという事だ。
「大事な場所を叩かれて興奮してお淫ら汁を出すなんてあなた変態よ! ブリュノさんのへんたい!」
結局それを逆手に取られイザドラにいいように詰られてしまう。
しかし謗られ辱められても、募ってくるのは怒りではなく快感だった。
「ん、むう……」
ドゥーべ氏は身体をよじり受容とも拒絶ともとれない濡れた吐息を漏らした。
「もう、あなたを自涜させるまでに昂らせるなんて、わたくしあなたの妄想のわたくしに嫉妬してしまうわ!」
イザドラはドゥーベ氏に覆いかぶさりその唇を啄んだ。
「でも現実のわたくしだってあなたの望みはなるだけ叶えてあげたいと思うの」
猛々しい叫びから一転して、そう穏やかな吐息に乗せながらイザドラは夫の分厚い唇を舐め、下唇と上唇を交互に吸う。
イザドラの腰がゆっくりと持ち上がり、野太い性器が焦らすようにドゥーベ氏の肉壺からじりじりと引き抜かれてゆく。卑猥に広がった肉の笠が肉襞を外向きに愛撫し物足りなさを植え付けながら入口へと退く。
ドゥーベ氏の腰がイザドラの怒張を追いかけてせり上がるが、下から追うのでは望む快感を捕まえる事は叶わない。このままでは逃してしまう、そう思われたが肉棒が抜け落ちる瀬戸際の所でイザドラの腰の動きは止まった。
イザドラが汗やら涙やらで濡れたドゥーベ氏の熱っぽく蕩けた顔を見下ろし、顔を淫蕩で蠱惑的な笑みに歪めた。
「だからあなたの最低な妄想の通り、子宮の奥まで突っ込んでさしあげます」
イザドラの細い腰にぐっと力が漲ったかと思うや、それは勢いよく落下してきた。
「んがっ、お゛ご……ぉっ!?」