赤ずきん、あるいは - 4/5

「じゃあセックス頑張る。まあまあよかった、から、すごくよかった、にさせる」
「あ、どうしよう、童貞狼さん本気にさせちゃったぁ。苛めすぎたかな、うふふ」
 ハルは余裕の軽薄な表情のままユキを見上げてきて、まだユキの心身の奥深くの猛りに気づいてはいないようだった。やる気とか苛立ちとか挑戦心とか、そういうものに。
「もう童貞じゃないですー」
「僕一人としたくらいでねえ。しかも随分なサービスプレイをしてあげたんだよ」
「でも定義上はもはや童貞ではない」
 膝頭でハルの脚を割り広げる。関節は大変柔らかで、どっしりみっちり肉厚な脚が簡単に大きく展開する様は婀娜。
「ハルさん身体柔らかいね」
「寝る前にヨガやってるもの」
 尻と太腿を揉みしだけば、無駄な力の入っていないしなやかな肉にむにむにと指が沈み形を変える。しかし離せばたちどころに復元する瑞々しい弾力。
「おわー、えっろ。ほんとにエロいお姉さんみたいなライフスタイルじゃん」
「ヨガを何だと思ってるの」
 目を焼くように生白い内股を根本からゆっくりと撫でてやると、ハルは幽かに目を細めて聞こえるか聞こえないかくらいの小さな甘い息を漏らす。
「ふ……ぅん、本気? まだするの? あんまり一度にすると飽きちゃうよ」
 手を滑らせている内腿と腹がふるりと震えた。しかし逃れる様子はない。快感のせいか、快感を得たいがためか、動くに動けないのだろう。
「そんなことない」
 ユキの指がハルの下着をずらし秘所を晒す。先程使ったばかりのそこは脱力しふんわり開いていたが、外気と視線に晒されて神経質にひくつく。
 使い慣れてふっくらとろとろに仕上がったハルの性器に指を沿わせ、そしてゆっくり埋める。ぢゅぷ、と穢れる寸前の淫猥な音を立てて割れ目が指を歓待した。とろりと蕩ける粘度の高い液。
「あ、は……ぁん」殆ど吐息のようなハルの喘ぎ。
 人肌の生ぬるさ、ぬかるんだ甘い締め付け、エロい声、熟した肉。たまらない。こんなの一生やれる。死ぬまでやれる。
「こんなにエロいんだから飽きるわけない。もしたとえ身体に飽きてもそれ以外は普通に好きなまんまだから、大丈夫」
「好きとかじゃなくて、身体飽きられるのがイヤって言ってるのっ」
 奥へ差し込んだ指先はそのままに、手首を動かして指の付け根で入り口を広げるように愛撫する。柔らかく歪む桃色の襞。
 経験豊富な割に花芯の色艶と形に穢れのようなものはない。それを見るにつけユキの背筋に怖気にも似た昂揚が迸る。エロいのに見た目は処女。こんなの滅茶苦茶にしないと気が済まない。
「じゃどんだけヤっても飽きないっていうの証明する」
 ユキは勝手に避妊具を拝借し、包みを歯で雄々しく噛みちぎって乱雑に開き身に付ける。肌にびっちり張り付き少し窮屈だ。
「あっ、んっ、でも今日はもういいじゃない、これから毎日……明日もしてあげるから。朝お迎えに来てくれた時でもいいよ。車の中でお口でしてあげる」
 流石にユキの本気の姿勢に気づいたか、ハルは都合のいい甘言を吐き散らかす。華奢な女など力で跳ね除ければいいだけなのだが、そうはしない。ただ浅く息を吐いて腰をくねらせ、下半身の快感を逃がす事だけに必死の様子。
「明日のことなんかどうでもいいよ。さっきハルさんイってなかった。それじゃあ終われない」
 気分を害するだろうから本人にそうはっきりとは言わないが、快感や身体の相性の良さを求めてまた行きずりセックスを再開されては困る。満足いただいてお開きにしないと心配だ。あとはとにかくやりたい。
「絶頂したし満足したから!」
 ハルは遅まきながら脚をばたつかせてユキを追い払おうとするが、肉粘膜に指の腹を押し付けて磨くように愛撫してやれば、途端に身体は大人しくなり、ただ間延びした甘ったるい拒絶の声だけが響く。
「っそれだめ、あぁ〜、もう指抜いてよお、使いすぎだめぇ」
 案外感度が良すぎて快感に弱い性質なのかもしれない。それもそれでエロい。
「抜かない」ユキは指を引き抜き白い太腿に手をかけ開いて固定する。「入れる」
 ずしりと音がしそうな程に一気に怒張を埋める。柔らかな恥部を腰骨で押し潰し、隙間なく密着させる。
「んぉ゛……ッ」
 ハルの喉から無理矢理空気が追い出され、室内に弾ける。
 惚けたように緩んでいた膣道が一拍遅れて制圧された事に気付いて強く締まる。
 先程とは違って異物に慄き怒張を追い出そうと激しくうねる内部。それもその筈、ユキの打ち込んだ楔は先程交わった時よりも奥深くに到達して硬く閉じた子宮口をがっつりと押し上げ、女体にとっては脅威以外の何物でもなかったのだから。
「お゛、ぉ、だめ、奥、来すぎ、っは、当たって、はあぁ、ん、抜いて……ってばぁ……だめなのぉ」
 しかし痛みというものはないようで、声は甘く、背を仰け反らせて後頭部を床に擦り付け頭を振っている。過度な肉悦に感じ入っているのは確かだろう。
 明かりが灯ったようにぽっと赤らむ肌、浮かぶ細かな汗粒。過ぎたる情欲に濡れてぼやけた瞳。ゆるく開いた唇と、その奥で飲み込めず溢れる唾液に濡れた舌。浅い息を放つ度に震える胸と腹。
「ユキちゃ……だめ、ぁ、ん、おねがい」
 その姿は初々しい。まるで初めて肉の愉悦を知った生娘。今までの手練染みた所業が嘘のようだ。けしからん男だ、とユキは昂る。
「すごい奥まで入っちゃった。もしかして、さっきは入れないようにしてた? ずるいね」
 ユキはハルの滑らかな臍の下辺りをさわさわと撫で、指先を埋める。
「ッ——!?」
 腹を押されるやハルは声にならない悲鳴をあげて痙攣する。目を見開き、瞳孔が縮む。脚が昆虫のようにきゅっと上向いてユキの腰を抱える。そして強く激しく引き締まる肉粘膜。
「あごめん。痛かった?」
 ユキは慌てて手を引く。ハルの肉越しにもわかるくらい自分の肉根は太く硬く隆起していた。外からと内から敏感で繊細な内臓が圧迫されて痛かったのかもしれない。
「ほんとにごめん。抜くね」
 しかしハルの膝頭はきつく閉じたままユキの腰を離さない。
「は、ふうッ、うぅう……動かないでっ、そのまま、ぁんッ、射精して終わって……」
 ハルは虚ろな目をどこか遠くへ投げ出し、それだけ言うと唇を噛んでその窮屈な裂け目からふうふうと苦しげな息を吐く。苦痛に耐えているというよりも、涙ぐんだ目の周りを赤らめている様は淫らな声を耐えている風に見える。いじらしい努力だ。ユキはその何もかもを無駄にしてやりたくて仕方ない。サディストの気はないはずだが、それもこれもこれだけ煽ったハルのせいだろう。たぶん。
「無理。いっぱい動いてハルさん気持ちよくしてからじゃないと」
 歓待どころではない恐慌状態のきつい締め付けに揉まれながらもユキは浅く小刻みに腰を動かし奥を突っつく。引き締まった最奥の窄まりを突く度に切先を拒む頑なな感触が心地よい。ここを何とか懐柔しておかしくしてやりたいと思う。
「ふーッ、うぅーっ、うぐっ、ぅー」
 ハルは必死に声を抑えているが、淫らな肉付きの身体は官能に炙られているようにうねる。
 この反応を見るに、もしかしたら先程の腹を押した時の掠れた悲鳴は絶頂のそれだったのかもしれない。蠱惑的な振る舞いのハルからは想像できない切羽詰まった喘ぎだったが、それほどまでに激甚な肉悦だったのだろう。
 快感に翻弄されて似つかわしくない醜態を晒したくないがために上位を取っていたのだとしたら、それこそまったくいじらしい。
「やばい、ハルさんかわいい、ほんとにすき」
 知能低めに貧弱な語彙で感極まったユキはハルの内腿に手をやり固定し、遠慮なしに大きく腰を動かす。愛と欲の入り混じった強烈な腰使いで肉襞の一枚一枚も奥に秘められた弱点も余す所なく突き荒らす。
「あ゛ーッ、はあ゛ぁああっ゛、んぁっ、ふぁああ」
 唇を噛む努力虚しく、激烈な責め立てにハルの唇は開け放たれて近所迷惑な身も世もない喘ぎ声が爆ぜる。
「そんなに叫んだら通報されちゃうじゃん。事件かもって」
 とは言うもののハルを静かにさせる気などユキにはさらさらなく、動きは変わらず意地悪く激しい。
「う、ん゛ぉッ、その通り、でしょっ……こん、なのぉ、っ暴行事件、なんだからっ」
「違うって」
「同意なく無理矢理気持ちよくするのは犯罪だもんっ」
「気持ちいいんだ。なんか、すごい嬉しい。わたしも気持ちいいよ、ハルさん」
 密着させた腰を回し、こりこりとした奥を擦り潰すように刺激してやれば、そこが徐々に懐柔されて和らいできているのが分かる。
「んっ、そうっ、きもちいいのっ、だから、や……ッ、だめっ、そこ、いいとこ、ばっかり、ふうぅっ、当てないでっ」
 抜き差しして蜜口に怒張の先端を押し付け圧迫する度にハルの言葉が途切れて面白い。
「さっき自分で腰振ってる時はいいとこ当たらないようにしてたんだ」中腰で奥まで入らないよう腰を落としきらずに動いていたとは恐れ入る。「すごい筋力」
「あっ、ぁ、んぁッ、だってっ、ユキちゃん簡単にそこ届いちゃうからぁ、イっちゃったまんま戻れなくなっちゃう」
「いいんじゃないの。エロくて気持ちいい事好きなんでしょ」
 ユキはハルの膝裏を持ち上げて腹側に折りたたみ、蜜道の入り口を掲げるように固定して腰を打ち下ろす。自重を乗せて抜き差し出来るので動きはより深くスムーズだ。慄く肉襞を素早く擦り込むと心地よさが全身に染み渡る。そして柔肉の打ち合う淫音が気分を高めてくる。
「んぎ、あ゛ッ、お゛ぉお」
 その音に混ざる濁った喘ぎ。お上品なハルには似つかわしくなく、かなりの快楽に叩きのめされているのだろう。奥を苛める毎に黒目が上に揺れ、舌は溶けて唇から溢れて、肉悦を高めている途上だというのに淫猥が極まりすぎている。
「ォ゛、そこォ、ほんとにっ、んぉ、ほとんど初めてだから……だめ、乱暴に使い潰すのだめぇ……っ、腰、ぉほッ、ぱんぱんってぇ、つよく、しないでっ」
 苦しそうでもあり心地よさそうでもある、濡れて蕩けた顔でハルは泣く。ついでに舌足らずな呂律の回らない喋り方をされると非常に腰に効く。
「煽るな! そう言われてやめるわけないだろ」
 腰をぎりぎりまで引き抜き、苛立ちを乗せて叩きつけるように腰を打ち付け、弱々しく抵抗する蜜口に凶悪な先端を非情にめり込ませれば、吐息混じりの悲鳴を長く伸ばして痙攣する柔らかな身体。
「んぉ゛あ゛っ、あぁあああぁ——」
「ああ、イってるんだ、中すっごいビクビクしてる……っは、こっちもイきそ……」
 その動きは精液を搾り取ろうとしているというよりは、ただただ肉の愉悦に痺れているだけといった方がいい。
 ユキも身震いし、再びハルの中で揉まれて絶頂する。他者の肉体を用いての射精の心地よさといったらない。しかもほとんど前人未踏の地。とめどなく快感が溢れてくる。
「うわ、量えぐい」
 肉棒が萎えきる前にハルから引き抜き、自分でもグロテスクに思えるほど白濁がどっぷり溜まった被膜を外す。穢れが溢れないよう縛り付けてゴミ箱にぶん投げて、返す刀で次の一枚を取り出す。
 三度目の射精を終えても、組み敷いた淫らな男体に視線を注げば身体の奥深くから肉欲が沸き立ってくる。
 身体の大枠こそ男のものであるが、淫らな気の溜まった細部は完全に雌。しっとりした肌から漂うのも雌の香りだ。
 好きに食い散らかされて暴虐に似た快楽を叩き込まれた肉体は自力で動かせない程に重たそうに床に沈んでいる。アイボリーのラグにふんわり包まれた肉厚の丸みを帯びた身体は上等な菓子のよう。
 ユキの味を覚え込まされている途中の花芯はひくんひくんと断続的に震えて蜜を蕩けさせ、まだまだ責め甲斐がありそうだった。
「ハルさん、身体エロすぎて終われないよ」
「やだやだやだやだ……ぁ。もーしないでっ、おなかきゅって押されてから、はあっ、熱いっ、おなか、じんじんして、ずっとぉ……」達したままなのだろう。「こんなの知らないよぉ」
「知れてよかったね」
 蕩けた顔で泣き言を宣うハルに対してユキは冷淡に返して行為を続ける。腰の奥ではまだ欲が蟠って燻っている。
 ユキはハルの脚を肩にかけ、覆い被さり押し潰すように挿入した。
「やめっ、あ……ッ!」
 ハルの身体はユキが圧しかかっても拒んだりはせずに柔軟に拓いて言葉とは裏腹にその身奥深くに雄を受け入れる。
 じゅぶ、と濡れた音を立てて絡み合う粘膜。
 押し潰した餅のような尻がかくかく震えて、ハルの悲鳴混じりの吐息が響く。
「はぁ……ッ……!」
 押し出されるように突き出たハルの濡れた舌が熱気溢れる空気を舐める。
 物欲しげに空気と絡む赤い舌に誘われて、ユキは身を乗り出す。肉質の脚を肩にかけたまま前のめりになったためにハルの腰が盛大に上向き、絶妙な角度に変わったユキの硬い屹立の先端が蜜口をごちゅ、と抉る。蜜壺からどぷりと溢れる愛液。
「ォ゛ごっ」
 ハルの身を再三の軽微な絶頂が貫いたらしい。下から殴られたように顎が上反りし、膝から下が爪先までぴんと優美に伸びる。
「ハルさんまたイってる。すごい……いくらなんでも刺激に弱すぎ」
 ユキはハルの尖った舌先を自身の舌で突く。んっ、とハルの息が心地良さげに詰まる。気をよくしたユキはそのまま長く伸びた舌のざらつく表面をなぞり、肉棒を口淫するように熱心に舐め上げ、絡めとる。
「かっ、ひゅ、んぇ……」
 脚を胸まで折り畳まれた苦しい体勢で、過ぎたる肉悦を逃すために吐き出していた舌を奪われ、ハルは苦しみ半ば愉悦半ばといった様相。温和な特徴を備えていたはずの顔は崩れて淫靡を通り越して淫猥。
 口の外で行われる交合。唾液を混ぜ合わせる音。粘ついた吐息。淫壺を刺激されずともハルは再三の絶頂に極まりを重ねたようだった。
「はぅっ、あぇ、あ——」
 終わらない快楽の頂にハルは涙を流す。
「舌だけでこんなに感じちゃうんだね。どういう生活したらこんなに身体敏感になるんだろ」
 長年、日々、日夜、淫行を重ねてきた故か。数多の愛撫と肉の交歓にもてなしもてなされてきたせいなのだとしたら……想像するだにユキは奥底から激る。以降は自分とだけこういう事をしてくれたらと心底願う。
「お゛ッ、ん゛ォ、っ」
 腰を弾ませ柔肉を打つとハルの深い呻吟が弾ける。いつもより低くじっとり湿って、鼓膜を官能的に震わせてくるなかなかに良い声。これが取り繕われていない素の状態のハルの声なのだろう。
 肉粘膜を擦り抜くほどに最奥から潤いが湧いて怒張に絡みついてくる。膣の入り口には抜き差しで追いやられた愛液が岩礁に叩きつけられた波のように渦巻いて白く泡立つ。酷使されて朱に充血した粘膜とのコントラストが淫靡すぎて目の毒だ。
「ああー、これが本気汁」
「そっ、そんなものっ、ないッ、童貞の妄想……ぉあっ、うぁ」
 ハルは眉根を悩ましげに寄せて弱々しく震える。ユキを咥え込んだ肉襞もより心地よく引き締まる。
「あ、ぁあ……ッ」
 戦慄く唇から切ない吐息が漏れて、顔を反らして瞑目し、再び甘く果てたのだと分かる。
 一方果てるには至らなかったユキはそのままのペースで動き続ける。絶頂したばかりの、いやそのまま絶頂し続けている中を犯され、ハルは息も絶え絶え。肩にかけられていた脚が力無く開いて落ちて、ユキの腰に巻きつき縋りつく。ユキの腰を抱きしめ、動きを押し留めようとしているのだろうが逆効果だ。むっちりした肌触りに包まれると性感は高まるし、より密着して緻密にハルの良い所を苛められるようになるだけだ。
「は、動いちゃやっ、もぉ゛っ、イかせないで、お願い、おねがいぃ……」
「本気のやつでイくまでやる」
「やだっ、本気イキやだ」